ホリエモンが、今どうしても伝えたいこと 堀江貴文氏インタビュー(上)
――堀江さんはご両親に似たところがあるのでしょうか。
堀江:愛情表現がうまくないところはそうですね。
――お父さんとお母さんのどちらに似ていると思われますか。
堀江:母親のほうだと思います。自分を素直に出すことができないところとか。
――母親はかなり激高することも多いと書かれていましたけど。
堀江:僕はそんなに激高しないです。それは反面教師ですよ。
過去にとらわれず、未来におびえず、今を生きろ
――堀江さんが言いたくなかったエピソードを入れて読者に歩み寄ってまで、特に伝えたかったメッセージは何ですか。
堀江:「過去にとらわれず、未来におびえず、今を生きろ」ということです。
――多くの人はその逆に見えるということでしょうか。
堀江:はい。過去にとらわれて、誰かに嫉妬や憎しみ、恨みの感情を持っていると、それは必ず自分に返ってきて、負のオーラが出てきてしまいます。人をうらやんでもいいのですが、そのエネルギーは「あの人のようになりたい」と思って頑張るというプラスの方向に行くべきでしょう。でも、そうでない人が多くて、「なんであいつだけ」と他人の足を引っ張ろうとする。
一方、未来のことを考えると、リスクばかり頭に浮かんで、おびえてしまう。20代の若者が「老後どうしよう」と心配していたりする。
「いきなりフルマラソンを走るのではなくて、まずは100メートル走から始めよう」と言いたい。それが小さな成功につながり、小さな成功の積み重ねが大きな成功につながっていく。これは僕がこれまで繰り返し言ってきたことです。
――人間的な部分をさらけ出したことで、より説得力が増していますね。
堀江:僕は、いい意味でも悪い意味でも、異世界の人間だと思われていた部分がありました。もちろん、僕も悩みはあるし、ルサンチマンの塊ですが、それをプラスのオーラに変えるように努力をしてきたのです。
人生ってマインドセットをちょっと変えるだけで、ものすごく豊かになります。それは難しいことでもなんでもないし、誰でもできることなのでやってほしいのですが、意外と誰もやっていない。それはやっぱり、未来を考えておびえているからでしょう。「起業してうまくいかなかったらどうしよう」とか。
編集ドリームチームに目からウロコ
――今回、100万人に希望を届けるような本を作るために、出版業界のカリスマ的存在であるケイクスの加藤貞顕さん、コルクの佐渡島庸平さん、星海社の柿内芳文さんというドリームチームを組んでいます。スター編集者の力を実感しましたか。
堀江:はい。信頼できる優秀な方たちで、どうすれば僕の思いや考えをしっかり届けられるか、一緒に何十時間も話し合いました。たとえば、オバマ大統領の伝え方も参考にしたのですが、オバマ大統領はいかにして米国国民に語りかけたのかを、彼らは僕に理論立てて説明してくれました。「MeとWeとNow」、つまり、「私、私たち、そして今」という構成で語りかけたんだと。
バラク・オバマという人は、表面的に見るとスーパーエリートですよね。家はお金持ちで、高等教育を受けて、上院議員で、まあ見た目もよくて、非の打ちどころのない人間に見えるのですが、国民にそう見えてしまったら共感を呼べない。そこで、何ら特別な人間ではなくて、マイノリティ出身で、いろいろな苦労もして、ここまで上り詰めたんだ。みんなと同じ米国国民であり、そして今、米国は何をすべきかを訴えたわけです。
僕も表面的に見れば、進学校を出て、東京大学に入って、在学中に会社を始めて、うまくいって上場して、転落した人という、パブリックイメージはそんな感じでしょう。僕を揶揄する言葉って、たぶん「デブ」ぐらいしかなくて。
――もうデブでもないですね。
堀江:今はたぶん「前科者」と言われるぐらいしかない。でも、それだとやっぱり伝わらない。