手術や入院にお金もかかり、その間仕事もできなかったので、結局お店を手放すことになってしまった。
現在はホームレスをしながら単発の清掃の仕事などで収入を得ている。ただ、食べるのが精一杯で術後の通院はできていないという。
がんは治ったが併発している病があるらしく、苦しい日々だと語っていた。
ホームレスの中には、厳しい野宿生活を続けるうちに病気になってしまう人もいる。
病気になっても病院に行けない
ホームレスの平均年齢は高い。平均60歳以上であり、70代、80代も珍しくない。高齢者にとって、夏の暑さ、冬の寒さは体にこたえる。いつでもきちんと食事がとれるわけではないので、栄養失調にもなりがちだ。
そしてほとんどの人は健康保険を持っていない。廃品回収などの収入では、食事代を確保するだけで精いっぱいである。病院に行くお金はとても確保できない。市販の薬を買うのすら難しい。病気になっても、我慢してやりすごして、そのうちに悪化していく場合が多い。
しばらく見ないのでテントの中をのぞくと亡くなっていた、というケースもよく聞く。多摩川などのテント村を歩いていると住人が亡くなってしまい、花や線香がお供えしてある小屋も目につく。
かつて上野のホームレス村を取材していたとき、定期的に一時立ち退きがあった。いったんテントを別の場所に移し、一定期間後に戻ってくることを強要された。警察や区から予告があるため、みんな朝からテントを畳んで移動する。しかし、動かないテントがいくつかあった。テントの中をのぞくと、すでに亡くなっていることが多かった。
不摂生がたたり病気になる場合もある。
かつてホームレスの喫煙率は非常に高かった。そのため、ホームレスの取材に行くときは、タバコを持っていってお礼に渡すことが多かった。
ただ、近年はタバコがずいぶん値上がりしたので、ホームレスには購入のハードルが上がったようだ。また、全体の喫煙者数が減り、喫煙のマナーも上がったので、ポイ捨てされた吸い殻もあまりなくなった。なかなか定期的にタバコを吸うのが難しくなり、そのままやめてしまったという人が増えた。タバコを渡そうとしても
「タバコはやめた」
と断られることが多くなったので、僕は最近、ホームレスを取材する際にはタバコは持ち歩いていない。
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