長野五輪の遺産「スパイラル」休止に学ぶ教訓 ボブスレー施設の後利用を阻んだ障壁とは
1998年長野五輪から21年が経過し、さまざまな会場が当時とは違った形で活用されていることは前の記事『東京五輪のレガシーは長野の21年の歩みに学べ』、『金メダルから21年「白馬ジャンプ台」厳しい現実』で紹介した。
そんな中、残念ながら「休止」に至った施設もある。それが「長野市ボブスレー・リュージュパーク(愛称=スパイラル)」。2017年度末(2018年2月5日)限りで製氷を断念し、現在はボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟のナショナルトレーニングセンター(NTC)としての機能をメインに細々と運営されている状態なのだ。
冬季五輪を招致するうえで、ソリ競技場の整備は必須だった。そこで長野市は飯綱高原に近い浅川地区中曽根に全長1700mのボブスレー・リュージュ・スケルトン兼用施設の建設を決定。用地費6億円、工事費95億円の合計101億円を投じて1996年12月にオープンし、本大会も無事に開催された。
その後の20年間はそのまま稼働していたが、競技人口150人程度にもかかわらず、年間維持管理費が2億2000万円もかかることが表面化。長野市は3年がかりで議論を重ね「市の負担で維持していくことは困難」との結果に至り、製氷を打ち切ることを決めたのだ。
20年を経て責任は果たせたのかな
「維持管理費の内訳は管理運営費が2億円、改修費が2000万円。NTC強化事業委託費として約1億円の収入はありましたが、それ以外はすべて市の負担になります。供用開始から20年が経過すると、冷凍設備や電光表示板や照明の改修など設備更新も必要になりますが、国の支援はなく、市の負担増は必至。そこも大きな懸念材料になっていました。
2017年度末の製氷休止後は年間運営費が1900万円に圧縮。NTCの収入が500万円あるので、市の負担は1400万円と、製氷していたときの約10分の1に抑えられました。2019年度予算もほぼ同額を見込んでいます。
こうした実情を踏まえると、長野市としてはホストシティとしての責任を果たせたのかなと感じています」と同市文化スポーツ振興部スポーツ課の鈴木秀規課長は神妙な面持ちで言う。
ただ、実際にスパイラルに関わっている人々は複雑な心境だ。ここで4年間働き、選手や関係者の努力や苦労を見てきた場長の松木政夫氏は苦渋の表情を浮かべる。
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