長野五輪の遺産「スパイラル」休止に学ぶ教訓 ボブスレー施設の後利用を阻んだ障壁とは
「2017年までは冬の12~2月の頭にかけて数多くのソリ競技の選手が来て、熱心に滑っていました。多いときは1日何十人にものぼった。彼らのガッカリした様子を見ると、何とかならなかったのかなと本当に残念な気持ちでいっぱいになります。
施設周辺は飯綱山を一望できる自然豊かな土地柄で、鷹のわたりでも有名。
そういう環境を生かしてバーベキューをしたり、イベントを開いたりと、大勢の人に来てもらう工夫を積極的にしていたら、年間700万円と言われた収入も増えていたのかもしれない。ここから近くにある、里谷多英選手がモーグルで金メダルを取った飯綱高原スキー場も閉鎖の危機に瀕しています。そうなれば、地域全体に影響が及ぶ。地元住民としても不安は募ります」
長野市も存続のため試行錯誤を続けてきたのだが…
五輪後の後利用に関しては、もちろん長野市も計画がないわけではなかった。当初は「タクシーボブ」という熟練パイロットがお客さんを載せてボブスレーを操縦し、スタートからゴールまで滑るというレジャーでの活用を考えていたが、パイロット不在で実現には至らなかった。
指定管理制度を導入し、レジャー施設としての後利用を進めていくことも検討されたが、NTC認定されていることから一般利用が制限されてしまった。「NTC収入がなければ、施設運営が立ち行かない」という事情もレジャー化を阻む要素になったのだ。
現在は電気や水道が止められているスタートハウスを見ても、ドアを開けるとまだ木の匂いがして真新しい。ある程度の広さもあるため、長野市や飯綱町の近隣住民を呼んで公民館として使ったり、文化サークルを開いたりすることも可能なように見えたが、それも「NTC」という縛りがあるために、簡単ではないようだ。
それでもこの5月からは、ポールを使って歩く「ノルディックウォーキング」のコースがオープン。11日には地元住民や信州ノルディックウォーキング協会の会員ら約30人が参加したという。それも冬季の製氷を断念したから新たに始めることができた試みと言っていい。五輪におけるマイナー競技施設の後利用の難しさを改めて再認識させられた。
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