トヨタ・パナ住宅統合、歴史から読み解く意味 偉大な創業者たちの問題意識を継承できるか

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前述のように書くとネガティブさが目立つが、もちろんポジティブな側面もある。共同出資会社は年間住宅供給が約1万7000戸(2017年度)となり、わが国でトップクラスの規模となる。

年間1万棟以上の住宅を供給している企業は海外にはほぼ存在しない。わが国には数多くの競争国があるが、同一国にある大規模な住宅、自動車、家電の企業グループが団結できるのはわが国ならではのレアケースなのだ。

だから、この統合がシナジーを発揮し事業を展開できれば、国内はもとより、海外における事業にも有利に働くと筆者は考えている。パナソニックホームズやトヨタホーム、ミサワホームの海外事業はまだ歴史が浅く規模も小さいが、拡大できる可能性があるわけだ。

もう1つの統合シナジー効果とは?

トヨタ自動車やパナソニックは世界的なブランドであることは言うまでもない。彼らが成功できれば、ほかの住宅事業者にも波及効果も大いに期待される。そういう意味では、今回の統合劇はわが国住宅産業のグローバル化に大きな意味合いを持つ出来事となりそうだ。

一方で、現在はIoT化など技術革新による変革期を迎えつつある時代でもあり、国や国民生活のあり方もそれにより大きく変わると予想される。ただ、いくら技術が進展しようと、生活者のニーズを把握できず、ありきたりなサービス創出に終始してしまう。

3社の統合に期待したいシナジー効果発現の1つは、住宅、クルマ、家電という異なるルーツから生み出された高い技術力や発想力で、国の発展や国民生活の向上に寄与するサービスを生み出すことである。

それは、冒頭に紹介した先人たちが住まいに抱いていた問題意識とは、時代の変遷に伴い形は違うが、根本は同じだろう。

ともすれば、今回の動きは縮小期にある国内住宅市場の中での住宅産業の業界再編劇と見られがちだが、このように見ると、よりダイナミックで期待感のある動きに映るのではないだろうか。共同出資会社の設立に関わる関係者には上記のような問題意識があると考えるし、そうであってほしい。

田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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