トヨタ・パナ住宅統合、歴史から読み解く意味 偉大な創業者たちの問題意識を継承できるか
家電や住宅設備などの IoT化や、自動運転技術を含めた移動サービスの進展などにより、今後、都市や地域のあり方が変わることが予想されることから、両社の経営資源を融合することで、街づくりを含めた住宅関連事業を強化するのが狙いだ。
共同出資会社設立はトヨタ自動車の「仲間づくり戦略」の一環と指摘する向きが多い。同社では電動車の電池に関してパナソニックと、移動サービスではソフトバンクと連携している。それが住宅関連分野にも及んだという見方もできる。
いずれにせよ、わが国を代表する自動車と家電の企業グループによるこの動きは、将来的な住まいや暮らし、モビリティー、さらには街のあり方に大きな影響を与えそうな出来事といえる。
ミサワホームも参画する
共同出資会社には、もう1社、ミサワホーム(1967年創業)が参画する。同社の創業者である三澤千代治氏も、工業化(プレハブ)住宅の普及、それによる暮らしの質的向上に尽力した人物である。
三澤氏はハウスメーカー創業者であるだけに、住まいや暮らしへの関心が高いのは当然で、多数の発言がある。また、今も精力的に発言を続けている。そのため、彼の言葉を紹介するのはここでは控えたい。
その代わりに、三澤氏への取材経験(おそらくミサワホームの経営者として取材した最後の世代)の中で、最も印象に残るエピソードを紹介しておきたい。2000年代初めのことである。
当時、三澤氏は商品発表会があるたびに必ず登壇し、自ら想いを語っていた。しかし、その内容は新商品そのものについてではなく、住まいや暮らし、街、そして住宅産業はどのようにあるべきか、を延々と語るものだった。
しかも、それは毎回のこと。新商品やそれに伴う戦略などの記事になる発言を求めていた筆者にとっては、何とも困惑する発表会だった。とはいっても、三澤氏の語っていたことは、大変真っ当なものだった。そして、それは現在の住まいや暮らし、街づくりを予測するものでもあった。
経営不振に伴い、三澤氏は2004年にミサワホームの経営から退いた。その後、トヨタ自動車の出資を受け、ミサワホームはそのグループの一員となり、今に続いている。そこに至る一連の動きは、当時の住宅産業界の大規模な再編を象徴するものであった。
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