女性の育児や仕事など、女性の問題ばかりが取り上げられるこのご時世。しかし、男だって「男ならでは」の問題を抱えて生きづらさを感じています。男が悩むのは“女々しい”!? そんなことはありません。男性学研究の精鋭、田中俊之先生がお答えします。
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■今回の相談
転職して都会から少し郊外に移住しました。今後、副業も始めたいと思っています。でも、副業は家計に大きな影響を与える問題なので、さまざまな抵抗を受けます。男だというだけで、自由な働き方をするのが許されません。
妻や子どもだけではなく、妻の両親からも、家庭を持った以上は家族の生活を優先して考えるべきだと言われます。とにかく給料が減るのは許さないと強く主張されるので、自分の希望が間違っているような気がしてしまいます。
そこで相談したのですが、男が自分の「やりたいこと」をするのに、家族からのバックアップを期待してはいけないのでしょうか。ぜひおうかがいしたいです。
家族には理解されにくい副業
まずは落ち着いてください。
東京では都市部にあるオフィスの近くに住もうとすると、コストが高く、その割に広さを含めて環境としてはあまり恵まれていません。だから、結婚したり、子どもができたりすると手狭になって、郊外へと引っ越すことになります。
その際に直面する問題の1つは、長時間におよぶ満員電車での通勤です。都市では満員電車が「普通」になってしまっていますが、どう考えても「異常」な混雑です。
この問題について、社会学者の加藤秀俊先生は、1976年に出版された『空間の社会学』の中で、18世紀における奴隷船と都市の満員電車の密度が同程度であると指摘し、次のように述べています。
サラリーマン生活が30年つづくということは、結局のところ、日本の平均的サラリーマンは合計15000時間ほどを奴隷船なみの高密度空間ですごしている勘定になる。かりに奴隷船の航海が10週間を要したとしても、それは時間数になおして1700時間ほどであるから、日本のサラリーマンは、その生涯をつうじて奴隷船に10回乗っているのだ、とかんがえてもよい。
1980年あたりまでは、官民問わずおおむね55歳ぐらいに退職するケースがほとんどでしたので、電車に乗る期間が30年と想定されているわけです。しかし、今日では65歳ぐらいまで働く人も少なくなく、そうすると40年を超えてきます。
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