「元SDN48」の彼女が失意の先に見つけた居場所

元アイドルの十字架はすべて人生の糧だった

一流の女優や歌手、タレントとして独り立ちすることがそれぞれの最終目標であることは、うそ偽りない事実であろう。しかし、そうしたゴールに到達するための「正攻法の地図」がどこにあるのかわからない。彼女が言いたかったのはきっとそういうことで、私はその思いが痛いほどよく理解できた。

それでもXデーはやってくる。2012年、3月31日をもってSDN48は“一斉に卒業”した。

最後のコンサート会場として用意してもらったのは、3カ月前の紅白歌合戦の現場と同じNHKホールだった。そこで全力でパフォーマンスを行った翌日からは、私は“1人のタレント”という立ち位置になった。

しばらくは気を取り直し地下アイドル業も続けてみたが、それにも限界がある。ファンも応援に駆けつけてくれて活動は楽しかったが、20代半ばに差しかかり、いよいよ「本気でなりたい何か」を考えねばならなくなった。

毎日がしんどかった元アイドルという呪縛

しかし依然として私は過去の栄光にすがりつき、昼は地下アイドル、そして、夜は「仕事につながるかもしれない」という思いから、業界の食事会に顔を出す生活を続けていた。

「君は、どんな仕事をしているの?」

当時、食事の席で初めて会う人からこんな質問をされたときは、

「元48グループのアイドルです」

と、答えてしまう自分がいた。

それはすでに“過去の職業”であるというのに、今の自分に自信がないからこそ、そう言っていたのである。

元アイドルという呪縛を、自分自身で勝手にかけていたのだ。誰も悪くないのに、なぜか毎日が非常にしんどかった。

その時期、顔を隠すようにして清掃員の単発アルバイトにも勤しんだ。単純に、芸能活動だけでは生活費が足りなかったからである。

くしくも熱心なSDN48ファンの方と、清掃先のオフィスなどですれ違うこともあったが、清掃員の格好をする私に、向こうはまったく気がついていない。こちらは握手会で何度も会っているため、彼の顔がハッキリとわかるというのに。

それは致し方ないことだが、アイドルの現場では応援してくれる方でも、時と場合によってはこんなにも様子が変わるのか、と人生の無常を感じてしまった。

そのとき、ふと思った。

私はこのまま何者にもなれず、中途半端なまま、名刺の渡し方も知らずに死んでいくのだろうか。

なぜか、猛烈に焦った。

そして得体の知れない恐怖とともに、「なにかしなければ」「このままでは終われない」という強い衝動が身体の中を駆け巡った。

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