いちいち「批判的な上司」がもたらす甚大な弊害 「操作的マネジメント」では部下は成長しない

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すなわち、「心のマネジメント」とは、部下やメンバーの「心」を、マネジャーやリーダーの都合のいい方向に変えていこうとするマネジメントではなく、部下やメンバーの視点に立ち、その「心」が、自然に、互いの共感力を高めたり、仕事に働きがいを感じたりできるように支援するものである。それは、上から「操作」するのではなく、自然に、「創発」的に、そうした状態が生まれてくるようにするマネジメントである。

では、そのために、マネジャーやリーダーは、具体的に何をするべきか。

まず、われわれマネジャーやリーダー自身が、その職場において、自発性と創造力、協調性と共感力を発揮していくことである。そして、われわれ自身が、仕事に意味や意義を見いだし、働きがいや生きがいを感じることである。

こう述べると、「操作的マネジメント」の手法に慣れている読者は少し拍子抜けされるかもしれないが、「創発的マネジメント」とは、あれこれの「操作的技術」(テクニック)によって、部下やメンバーの「心の状態」を変えようとするものではなく、部下やメンバーの「心の状態」がいい方向に変わっていく「場」を生み出すマネジメントにほかならない。

すなわち、もし、マネジャーやリーダー自身が、自発性と創造力、協調性と共感力を発揮し、われわれ自身が、仕事に意味や意義を見いだし、働きがいや生きがいを感じているならば、自然に、その職場には「自発的で創造的な場」や「協調的で共感的な場」が生まれ、また「働きがいや生きがいの場」が生まれてくる。

そして、その「場」の中で部下やメンバーもまた、自発性と創造力、協調性と共感力を発揮し、仕事に意味や意義を見いだし、働きがいや生きがいを感じるようになっていく。

昔から「部下の姿は、上司の心の鏡」や「職場の空気は、リーダーの心の鏡」といった言葉が語られるが、「心のマネジメント」とは、ある意味で、この言葉を実践する極めて高度で成熟したマネジメントでもある。

マネジャーが「カウンセラー」になる時代が来る

そして、それゆえ、この「心のマネジメント」には、「共感協働のマネジメント」「働きがいのマネジメント」に加え、もう1つ大切な役割がある。それは、次の第3の役割である。

第3「成長支援のマネジメント」
部下やメンバーの不満や不安、迷いや悩みに真摯に耳を傾け、その不満や不安、迷いや悩みを契機として、部下やメンバーが人間的に成長していくことを支えること

これは、ある意味で、部下やメンバーに対する「カウンセリング」と呼ぶべき仕事でもあり、ときに、「コーチング」と呼ぶべき仕事でもある。

もとより、この「カウンセリング」や「コーチング」は現在、それぞれ、その専門の職業が存在しているが、これからの時代には、1つの組織やチームを預かるマネジャーやリーダーには、それを外部の専門職に任せるだけでなく、自分自身がその2つの力を身に付けることが求められるようになっていく。

そこで、ここでは、カウンセリングにおける最も重要な技法、「聞き届け」の技法について紹介しておこう。

次ページ非常に役に立つ「聞き届け」の技法
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