いちいち「批判的な上司」がもたらす甚大な弊害 「操作的マネジメント」では部下は成長しない

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このように、これから、マネジメントにおける「管理業務」の大半はAIに置き換わっていくが、では、こうした時代に、人間だけにできる高度なマネジメントとは何か。

それは、「心のマネジメント」であるが、それは、まず、次の2つのことを行うマネジメントである。

第1「共感協働のマネジメント」
部下やメンバーが、自発性や創造力、協調性や共感力を遺憾なく発揮し、互いに協力し合って優れた仕事を成し遂げられるようにすること

第2「働きがいのマネジメント」
部下やメンバーが、仕事に意味と意義を見いだし、働きがいや生きがいを感じられるようにすること

実は、このような「心のマネジメント」こそが、情報革命が進み、AIが普及していく21世紀の高度知識社会において、マネジャーやリーダーにとっての最も高度で重要な仕事になっていく。なぜなら、それは、これからAIがどれほど発達しても、決して代替できない仕事であり、人間だけにできる仕事だからだ。

マネジメントのパラダイムが変わった

では、われわれは、その「心のマネジメント」を行うためにいかなる力を身に付けていくべきか。そのことを考えるためには、1つ大切なことを理解する必要がある。それは、これからの高度知識社会においては、古い「操作的マネジメント」から、新たな「創発的マネジメント」へのパラダイム転換が求められるということである。

ここで、「操作的マネジメント」とは、部下やメンバーを「操作する」対象として見るマネジメントであり、企業の経営目的のために、彼らをいかにして効率的に働かせ、生産性を上げるか、という発想に基づいたマネジメントのスタイルのことである。これは、工業社会において主流であった「軍隊型組織」を模したマネジメントのスタイルであり、「管理型マネジメント」と呼ばれることもある。

一方、「創発的マネジメント」とは、部下やメンバーを「操作しよう」とせず、彼らの自主性を大切にし、その自発的行動を支援することによって、結果としてそこに新たな技術や商品、サービスやビジネスが、自己組織的なプロセスで「創発的」に生まれてくることを促すマネジメントのスタイルである。

これは、これからの高度知識社会において主流となっていくマネジメントのスタイルであり、情報革命によって企業や組織が、その複雑性を増し、「複雑系」(complex system)と呼ばれるものになっていくと、「創発」や「自己組織化」が起こることから「複雑系のマネジメント」と呼ばれることもある。

次ページマネジャーやリーダーの心の姿勢が「成長の場」を生む
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