経産省が目論む「新たな技術立国」へのステップ IFA Nextのパートナーに日本が選ばれた理由

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バブル後の日本は“科学技術創造立国”を目指し、先端科学技術への投資を積極的に打ち出してきた。平成時代を代表するこの政策は、バブルの最中でも500億円以下だった研究開発予算が2000億円以上に増加し一定の成果を得ているとも評価されている。

ところが一方で、先端技術に関する有力な論文の数は減少しており、他論文で引用される有力論文の数では、他国に後れを取っているのが実情だ。現政権が研究開発よりもイノベーションへと、産業育成支援の軸足を移しているのは、アメリカ流のテックイノベーションが進んだ結果、国全体としての競争力を失った背景もある。

「ソサエティ5.0」とは?

日本は2016年、第5期科学技術基本計画のキャッチフレーズとして「ソサエティ5.0」を提唱。“空飛ぶ自動車”をはじめとしたいくつかの開発目標が生まれ、ネットワーク化された次世代社会に向けたイノベーションに投資してきたが、必ずしもグローバルに広く発信できているとは言い難い。

アメリカ流のテックイノベーションは、このコンセプトの中ではソサエティ4.0に相当する「情報化社会」の中で実現されてきたものだ。ソサエティ5.0への投資と、そこから生まれてきた“新たなイノベーションの芽”を生かすには、第5期科学技術基本計画も終盤を迎えてきた中で、国外への情報発信を強化すべきという考えもあるようだ。

IFA事業の責任者を務めるイエンズ・ハイテッカー氏(筆者撮影)

西山氏は「製品を並べるだけでは意味がない。日本として、次世代社会実現のために何ができるのか。単に日本のテックベンチャーを並べるだけではなく、日本流のテックイノベーションがどのようなものかコンセプトを発信し、“日本の新しい姿”を見せる」と話した。

メッセ・ベルリンでIFA事業の責任者を務めるイエンズ・ハイテッカー氏は「長年、日本の電機業界とは強い結びつきを持ってきた。多くの研究開発投資があり、産業界には大手からスタートアップまで幅広いプレーヤーがいる。若手も多い。パートナー国としてのIFA NEXTに参加することで、より多くの国のジャーナリストや企業、政府機関などと交流してほしい」とエールを送った。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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