経産省が目論む「新たな技術立国」へのステップ IFA Nextのパートナーに日本が選ばれた理由

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gfu(ドイツ家電通信機器協会)の諮問委員会・会長のハンス=ジョアシム・カンプ氏は、2019年のグローバル市場は「成長率ゼロ」との予想をGPCの中で発表した。白物家電やAV機器などは、欧州を中心に“プレミアム製品志向”が高まり、販売単価が上昇しているものの、一方では裾野を支える普及製品の価格下落や買い替えサイクルの長期化が進み、極めて成熟した市場となっている。

IFAを運営するメッセ・ベルリンCEOのクリスチャン・ゲーケ氏(筆者撮影)

gfuでは調査会社GfKのデータを基に、テレビ市場は4Kテレビが台数ベースで50%増、OLED(有機EL)テレビが45%増と予想するものの、いずれも金額ベースでは5%増、33%増にとどまる。4Kテレビの販売シェアは71%に達すると言われており、ここ数年の成長を支えた4Kテレビ市場も、いよいよ攻め手を失いつつある状況だ。

スマートフォンなどのテック製品も伸び悩んでおり、今後はグローバルで進行しているオンライン販売への最適化と年末セール期に集中する販売傾向への対応といった、消費者行動に沿ったマーケティングを行う必要性が話題の中心となっていた。

次世代のイノベーションを担うテック企業を集めた「IFA NEXT」が始まったのは3年前のことだが、こうした業界全体の行き詰まりを打開する方向として、さらに高い提案性を持たせるため「(国ごとの取り込みを)深掘りし、コンセプトとビジョンを発表する”パートナー国”の設定を模索してきたと、IFAを運営するメッセ・ベルリンCEOのクリスチャン・ゲーケ氏は話した。

なぜIFA NEXT、なぜ日本なのか?

「日本がテクノロジー製品や技術を訴求する場」としては、独ハノーバーで行われていたCeBITへの出展があった。2017年開催のCeBITでは日本がパートナー国となり、117社が日本からの出展社として参加。独首相アンゲラ・メルケル氏と安倍晋三首相が揃い踏みし、両国は産業のデジタル化に関する共同声明「ハノーバー宣言」を出したが、翌年、2018年からは開催中止となった。

CeBITはもともと産業技術の総合見本市「ハノーバー・メッセ」から、デジタル部門が独立したものだったが、独自性を打ち出せずに低迷。2017年、日本がパートナー国となった年、起死回生の改革を行ったところだった。

改革の打ちだしは、スタートアップや先端技術を集める「IFA NEXT」、ジュネーブモーターショーと連携して新モビリティ展示を集める「SHIFT Automotive」を併設するなどの改革を続けるIFAとも重なるが、急進的な改革を一度にやりすぎたCeBITとは異なり、一般的な見本市としてのIFAはそのままに、他の要素を融合させることで規模を維持しながら、現代的な見本市へとシフトしようとしている点が異なる。

西山局長は「日本には技術展示会としてのCEATECを国際化しようと取り組んできたが、さらにオープンに海外でも訴求する場を用意したかった。世界中のメディアとのコンタクトがあるIFAで“日本発”の技術イノベーションを発信する」と話す。

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