「ネガティブな数字」には妙な説得力がある理由 「成功率99%」より「死亡率1%」が気になる

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このプロスペクト理論を応用すると、伝え方はどのように変わってくるでしょうか。例えば、あなたの会社がこのような宣伝トークで製品を売っているとします。

「この製品を導入すると、年間100万円コストが浮くことになります」。これが悪いわけではありませんが、プロスペクト理論を用いれば、このような表現になります。「この製品を導入しないと、年間100万円ずつ無駄なコストを払い続けることになります」。いかがでしょうか。後者のほうが「何か行動を起こさねば」という思いを喚起させられたのではないでしょうか。

「確率」より「整数」のほうが伝わる

いくら数字に強くても、その「伝え方」を誤ってしまえば数字で話す力は半減してしまいます。そこで、ここからはこうした伝え方のコツを紹介したいと思うのですが、1つ、最初に申し上げておきたいことがあります。

それは、この手法を「悪用」しないでほしい、ということです。

実際、世の中には数字を悪用する事例に事欠きません。典型的なのは迷惑メール。身に覚えのないサイトから「会員登録が完了したので、30万円をお支払い下さい。さもなくば解約金10万円を今すぐお支払い下さい」などというメールが突然届く。これなどはまさに「損をしたくない」という思いを巧みに突いた、プロスペクト理論の悪用です。

数字で伝えることは大事ですが、「数字で人をだます」ようなことは決してしてはならない。それだけは、ぜひ覚えておいてください。

さて、確率、つまり「%」は、人間にとってあまり理解しやすいものではありません。人は「整数」のほうがすっと頭に入ってくるのです。具体的には、「30%」よりも「10回に3回」といった表現のほうが理解しやすい、ということです。より「自分事」として伝わるのです。さらに言えば、同じ30%を言い換える際にも、「100回に30回」「50回に15回」「10回に3回」などと、いろいろな伝え方が考えられます。

次ページ事例によってボリューム感を変えると…
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