中国の成功した男は、なぜ愛人を囲うのか 中国の夫はつらいよ(中)

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――みな、けっこう危ない橋を渡りながら巨額を稼いでいますよね。

:中国は今のところ、本当の危機というものに直面していません。だから危ないとか怖いとは思わないんでしょうね。稼げればそれでいい。

僕は日本のバブル崩壊の頃、ちょうど東京で働いていたので、バブルが終わるというのがどういうものかなんとなくわかります。でもそういう経験のない中国人は、300万元で買ったものが150万元になるということを実感できないでしょう。

それにバブルといっても、中国が日本と違うのは、日本の投資の失敗はみな個人的なものだったということです。バブル崩壊で社会が大混乱になることもありませんでした。

でも中国の今のバブル的状況は国によるものです。国が金稼ぎに精を出すのをやめたら、あっという間にバブルはなくなるでしょう。日本のとき以上の影響があるかもしれない。海外の報道を見ていると、すごく危険なような気がします。

ただ僕自身、数年でバブル崩壊するのではないかと思っていたのですが、今のところ持ちこたえています。ではこのままずっとバブルかといえば、物事には何でも法則がありますから、それを完全に逸脱したまま長く続けることには無理があるでしょうね。

――そうなったら、愛人もはべらせられなくなる……。

友人妻:習近平が唱える「中国夢(チャイナドリーム)」って、結局、みんな、愛人をはべらすことなのね!

――いやいや……。90年代生まれの北京っ子の青年なんかは、「成功して愛人を囲うなんて人生の失敗者だ」と言っていました。その彼は、金持ちのボンボンで、スキューバーダイビングのインストラクターになると言って、親のカネで東南アジアに行ったのですが、実際にインストラクターをやってみたら、ガイドするのは中国人旅行客ばかりで、彼らのあまりのマナーの悪さに早々に音を上げ、今は水中カメラマンになると言っています。

:それ、僕はいいと思うな。彼の親はきっと、必死にカネを稼いできた世代でしょう。彼はそれを見て育ち、別の道を歩くことにした。そういう若者が出てこないと、この国は変わらないよ。

――今の若い世代はだいぶ多様化していますよね。ダイビングの彼も、成功して愛人をはべらせたりはしないでしょう。もっと別のことにおカネを使うと思います。

友人妻:でもそれは政府にとっては、あまり歓迎すべき事態ではないかも。おカネの使い方が多様化したら、誰もがこぞってマンションを買いあさったりはしなくなる。今みたいなバブルがなくなったら、国は儲からなくなってしまう。

:そうなったとき、この国はきっと様変わりするんだろうと思いますよ。

田中 奈美 ルポライター

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たなか なみ

東京都生まれ。2003年より北京に留学。中国の社会生活やビジネスに関するルポを各紙誌に発表。著書に『北京陳情村』(第15回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作)『中国で儲ける―大陸で稼ぐ日本人起業家たちに学べ』(新潮社)がある

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