「車椅子の自動運転化」が変える社会の風景 障害者利用の先に見据える「健常者の需要」
今、ある電動車椅子のベンチャー企業に世界中が注目している。その名はWHILL(ウィル)。同社は 1月にアメリカ・ラスベガスで開催された世界最大級の家電・ITの見本市CESで「Accessibilityカテゴリ」の最優秀賞を受賞したほか、日本政府が主催する「日本ベンチャー大賞」の第5回審査委員会特別賞も受賞。従来型の電動車椅子にはなかった「自動運転システム」の革新的な技術などが評価されたことによるものだ。
WHILLは、従来の利用者である高齢者や障害者といった、体の自由が利かない人たちだけでなく、健常者の隠れた需要を生み出そうとしている。まず、WHILLの製品は従来のものと何が違うのか。29歳という若さで創業した、代表取締役CEOの杉江理(さとし)氏に話を聞いた。
乗り越えにくい「ちょっとした段差」をスムーズに走行
「特長は従来のものに比べて、小回りと走破性を両立している点です。これまでのものは、前にくるくる回るキャスターが付いているものがほとんどです。これだとちょっとした段差を乗り越えるのが難しく、誰かに押してもらわないとなかなか前に進めません」。
ではWHILLの製品は、従来型の限界をどう乗り越えたのか。
「オムニホイールという車輪を前輪に搭載することで、こうした段差はもとより、凸凹道などの悪路も難なく走行できるようになりました。そして、手もとのコントローラーだけでなく、車椅子と連携しているスマートフォンのアプリで操作ができるほか、バッテリー状況、位置情報なども確認できます」
独自開発の車輪は、最大5㎝の段差までクリアできる。車椅子利用者は電車などの公共交通機関で何かと不便な思いをしているが、従来の電動車椅子に比べ幅55㎝とコンパクトなうえ、3つに分解してセダンタイプの車に車載できる。日本での最高時速は6㎞/hと早歩き程度の速さで走行でき、小回りが利くのも特長だ。
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