日本のおかしさ映す「東京貧困女子」の問いかけ 幸せな青春を送った世代は現実に気づいてない
ところが、現場職員がどれだけ業務にプライドを持って前向きに取り組んだとしても、雇用主である自治体はそれを認めない。非正規は安く使える駒にすぎず、期間に上限のある有期雇用なので、決まった期間働いてもらえばいいだけだという考え方だ。だから彼女のような立場にいる人は、どうあがいても貧困から抜け出さない。
役所は誰でもできるって考えているし、いくらでも交換ができる部品くらいにしか思われていません。だから、非正規なのでしょう。私は司書の仕事をどうしても続けたくて、いまここが2カ所目です。前は他県の図書館で働いて、満期5年で契約が切れてしまったので都内に引っ越しました。また、あと1年半しか仕事ができないって考えると不安で、たまに眠れなくなることもあります。(196ページより)
結婚も出産も、貧しい自分には関係のないこと
悩んでしまうのは、あと何年でクビという不安から逃れたいから。ひとり暮らしで貯金がゼロなので、働き続けないとホームレスになっちゃいます。だから、本当に、働ける期限があるのは怖いです。(198ページより)
単身で暮らす20~64歳の女性の3人に1人(32%)が貧困状態(国立社会保障・人口問題研究所)にあり、さらに65歳以上の単身女性になると47%と過半数に迫るのだという。そうでなくとも図書館は、財政難の自治体にとってはお荷物的な存在だ。女性が1人で生きていくには困難な材料がそろいすぎているが、そんな渦中にいる彼女に対して、中村氏は結婚する意思はないのかと尋ねている。
結婚すれば生活が変わるみたいなことはよく言われていますが、非正規で低収入な自分にまったく自信ないし、誰かが見初めてくれるとはとても思えない。やっぱり結婚とか出産は、普通以上の収入がある人の特権というか、自分にかかわることとはとても思えないです。(201ページより)
一緒に働く2割くらいが正規の公務員の方々です。正規の方々が職場で話していることは、買い物とか旅行とか、子どもの教育とか、そういう話です。正規でちゃんとしたお給料があって、家族で暮らしている人たちは、子どもにたくさん習い事をさせて、年に何度か海外旅行に行くんだ……って。なにか別世界というか。私は飛行機代がなくて、いまの職場で働き出してから一度も実家に帰れてないのに。この差って、なんなのでしょう? 仕事を真面目にやっているだけではダメなのでしょうか。(201~202ページより)
とても真面目な人なんだなということがよくわかる。裏を返せば、いまの日本は真面目な人にとって生きづらいということになるのではないだろうか。
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