日本のおかしさ映す「東京貧困女子」の問いかけ 幸せな青春を送った世代は現実に気づいてない

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無駄遣いしないし、なにも欲しいものはないし、部活をやって大学を留年しないで無事に卒業したいだけです。それだけ。やっぱり月3万円くらい、どうしても足りない。風俗は気持ち悪くなってしまうので、本当はすごくやりたくない。やらなくていいなら、すぐに辞めたいです。なんていうか、自分がやっていることが気持ち悪い。自己嫌悪です。全然知らない人と裸で寝ているとか変だし、おかしいことをしているなって。彼氏にも悪いし、なにもいいことはないです。(36ページより)

この女子大生の話を読んでいて、わかることがいくつかある。まずは、貧しい家庭環境にありながらもきちんと勉強し、学生としての本分を全うしようとしていること。そして、風俗に嫌悪感を持っていること。

それでもやらざるを得ないのは、唯一の心の拠り所になっている部活を続けたいからだ。それが、彼女をギリギリのところでつなぎとめていることが、文字を追っているだけでもわかる。

誹謗中傷で埋まったコメント欄

ところがこの取材記事が東洋経済オンラインに掲載されると、コメント欄が誹謗中傷で埋まったというのだ。

売春の是非は論点ではなく、国の未来を支える優秀な学生が望まない換金をするしか勉強を続けられない、という現実に問題があるのだ。日本に取り返しのつかない異変が起こりつつあることに、幸せな昭和を送った世代を中心に大多数は気づいていない。
コメントをしている人々の年齢はわからないが、おそらく上の世代の男性の方々としよう。日本の1800兆円の個人金融資産(日本銀行調べ)の6割は60歳以上の高齢者が所有し、世帯平均貯蓄は2000万円を超えている(総務省調べ)と言われている。一方、奨学金を利用する大学生(昼間部)は半数近くになっている(日本学生支援機構調べ)。
さらに、貧困に苦しむ若者たちが学生生活の継続のために「選択肢がそれしかない」と誘導されている風俗や売買春の利用者は中高年層がメインだ。
妹、または娘や孫の世代にローンを背負わせた挙げ句、性的奉仕をさせる社会になってしまっている。自分たちが絶望の淵に誘導した娘や孫のような次世代を担う女の子たちに、気分に任せて誹謗中傷を浴びせて、自分がさらに気持ちよくなっている。どこまで都合がいいのだろうか。異常としか言いようがない。(43~44ページより)
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