日本のおかしさ映す「東京貧困女子」の問いかけ 幸せな青春を送った世代は現実に気づいてない
大学生の親世代が青春時代を送った30年前と比べ、現在は可処分所得が減り、子どもに必要なお金を出すことができないという状態になっている。そして、日本の未来のため若者たちに対して教育に投資すべき国も、奨学金制度、国立大学の運営交付金の削減による学費高騰、定員の厳格化など、大学生の貧しさに拍車がかかる政策をどんどん進めている。
当然の結果として大学生たちは困窮に陥っているが、大学時代に幸せな青春を送った親世代は、その苦境に理解を示さないまま、自分たちの価値観だけで判断し、若者をさらに追い込んでいるのだ。
テレビもパソコンもない家賃5万円の福祉物件
しかも、困難な状況は学生だけを苦しめているわけではない。たとえば読了後も頭から離れなかったのは、非正規雇用の図書館司書として働く37歳の女性のケースだ。図書館で働く司書の8割前後は非正規雇用で給与は安く、しかも未婚で一人暮らしであるため、毎日不安と焦りばかりだという。
給与の総支給額は17万円。所得税、住民税、社会保険料を引かれ、手取り金額は13万3442円。賞与はなく、年収204万円で手取りは160万円程度。東京で一人暮らしをするには厳しい金額だ。
最寄り駅から15分で築年数も古い、福祉物件と呼ばれる家賃5万円の部屋で暮らす。仕事帰りには、割り引かれた食材や総菜をスーパーマーケットで買う。低賃金でお金が貯まらないので、部屋にはテレビもパソコンもない。調べ物は、分割で買ったスマートフォンでしている。
不安しかない日々に悩んだ結果、学芸員の資格を取得しようと、通信制大学の科目履修生になった。中村氏によると、公的機関の非正規雇用に悩み、貧しさから抜けたいのに学芸員の資格取得を目指すというのは、真面目で貧しい人の行動パターンなのだそうだ。
図書館司書は専門職だ。「私は子どもたちのための児童書や児童文学に詳しくて、たまに自分が企画してフェアみたいな企画をやっています」という言葉からも推測できるように、彼女は自分の仕事にプライドを持って臨んでいる。
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