「日本南西端の島」で最先端の再エネ事業が始動 宮古島が日本のエネルギー政策を変えるか?

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実はこの地下ダムから吸い上げるポンプに使う電力は、夏期の需要の約1割を占めている。家庭や事業用で電気の使用率が低い時間帯にポンプを稼働できればピークカット/ボトムアップが同時に可能になり、需要の平準化は大きく進む。このため現在、末端の散水栓をコントロールする仕組みの開発を急いでいるところだ。散水栓をコントロールすることで、貯水池に水を引き上げるポンプの稼働もコントロールしやすくなるからである。

農業用水もコントロール

電気を使用する側をコントロールする仕組みを構築すると同時に、供給側もコントロールする仕組みも開発している。

散水栓に水を供給するバルブ。現在は人力で開閉しているが、電池駆動で開閉できる弁とそれをコントロールするための通信機器を開発中(筆者撮影)

太陽光発電を主力電源化するためには、天候によって発電量が変化する変動性電源から、火力のように一定した出力が維持できる安定性電源にすることが必要になる。発電しすぎると供給過剰になり需給バランスが崩れて大規模停電になる恐れがあるからだ。

そこで、変動性の高い高位出力帯をあえてカットする常時出力制限をすることとした。不安定な太陽光発電を安定化することで主電力とし、そのバックアップとして火力発電を稼働させる素地を作ったのである。

こうして太陽光発電を普及させていき、家庭用蓄電池が普及価格帯に入ってきたときに、夜間電力も太陽光・風力の再生可能エネルギーで賄う体制を構築する。これにより、エコアイランド宮古島宣言2.0で掲げた高い目標、2050年度のエネルギー自給率48.85%、CO2削減69.1%(2003年比)が達成できるとしている。

このプロジェクトの初期段階から関わり、太陽光発電システムとエコキュートの供給、およびエネルギーマネジメントシステムの構築で協力しているパナソニックエコソリューションズ スマートシティ推進担当主任技師の西川弘記氏は、「宮古島は人口5万人で電力的に閉ざされた環境なため、問題点、解決策、検証と結果がわかりやすい環境にある。ここで得られたエネルギーマネジメントのノウハウは、マンション群や新興住宅といった特定のエリア、1つの変電所単位で導入できるようにもなるだろう。川上・川下の調整力が得られれば、再生可能エネルギーを主体とした省エネ社会の構築が日本全体で可能になるのではないか」とする。

現代社会において、電気は安定供給が不可欠なインフラだ。しかしその電力は有限な化石燃料に依然として多くを依存している。今後、石油価格は上昇する懸念があり、発電コストはより高まる可能性がある。また、CO2を多く排出する火力発電は地球温暖化対策上、削減の方向に向かうのは必然だ。

先ごろ、政府はCO2の排出を2070年ごろまでに実質ゼロとする新たな目標をまとめたが、それには太陽光を始めとした再生可能エネルギーの利用拡大が不可欠だ。小さな島で始まった取り組みが日本のエネルギー政策にどのような影響を与えるのか、今後も注目していきたい。

近藤 克己 フリーライター

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こんどう かつみ / Katsumi Kondo

1966年生まれ。福島県出身。明治大学文学部史学地理学科考古学専攻卒。ロジスティクス分野の業界紙記者、IT&家電製品の月刊誌記者・編集長を経て、独立。現在、フリーライターとして活動中。得意分野は流通、物流、生活家電。

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