「日本南西端の島」で最先端の再エネ事業が始動 宮古島が日本のエネルギー政策を変えるか?
しかし、農産物の生産高が上がり、島民の生活が安定し、生活の質が向上、人口も増えていくのと比例して生活排水が増え、地下水の汚染が深刻化する。1989年には地下水の硝酸態窒素濃度が8.9mg/Lまで上昇、10mg/Lになると体力のない乳幼児や高齢者の命に危険が及ぶと言われている中で、宮古島の飲料水の汚染度は危機的レベルだった。
そこで宮古島市は、いつまでも住み続けられる豊かな島づくりを目指して2008年に「エコアイランド宣言」を出し、環境保全のためにさまざまな取り組みを始めた。エコアイランド宣言は大きく5つの指標が策定されている。地下水の水質改善・維持、家庭系ゴミ排出量の低減、エネルギー自給率の向上、サンゴ礁被度の維持・向上、固有種の保全だ。この中で今回取り上げるのはエネルギー自給率の向上である。
2050年にCO2削減69.1%の高い目標
地下ダムの建設により農産物の収穫高が増加したとはいえ、主産業のサトウキビは国の補助金によって黒字化している状態で、島の経済を支えるものではない。
一方で、島の経済を支える観光産業は年々拡大し、今年3月には下地空港の国際ターミナルもオープンしてますますの発展が見込まれている。豊かな自然環境が観光資源なため、これを守らないと観光産業は衰退し、それに伴って人口も減少することは目に見えている。
「そのためにも、エコアイランド宮古島宣言2.0ではCO2排出量を2030年に2003年比37.3%減、2050年には69.1%減を目標として設定した。これを実現するためには再生可能エネルギーを中心としてエネルギー自給率を上げていく必要がある」と、宮古島市企画政策部エコアイランド推進課の三上暁係長は説明する。
現在、宮古島のエネルギーのほとんどは沖縄本島から海上輸送される石油燃料によって賄われている。海上輸送のコストが上乗せされる分、自動車用のガソリン価格は本島より1L当たり20円ほど高い。
一方、電気料金はユニバーサルサービス制度により本島と同じ水準になっているが、沖縄電力の離島部門は年間70億円ほどの赤字が続いており、宮古島だけでも25~30億円の赤字と見られている。
これは、宮古島の発電設備の負荷率(設備利用率)が一つの要因となっている。沖縄本島や本土の負荷率が65%前後と言われている中、宮古島は50%を切っているのである。
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