「日本南西端の島」で最先端の再エネ事業が始動 宮古島が日本のエネルギー政策を変えるか?
つまり発電効率が悪い。過去5年間で観光客が3倍増したことで電力のピークは毎年更新しているが、それは持続的なものではなく真夏の夜8時前後の短い時間となる。ピーク時に電力が足りなくなると需給バランスが崩れて一瞬にして大規模停電になる恐れがあるため、電力会社はこの一瞬のピークのために発電設備を用意しなければならない。そのため負荷率が低く、投資コストを回収できない状況に陥っているのである。
太陽光とエコキュートを無料設置
観光資源を守るためにCO2を削減し、発電コストを下げながら電力ピークに対応、外的要因に左右されない安定的な電力供給を目指す。これらの課題を解決すべく2011年からスタートしたプロジェクトが、「島嶼(しょ)型スマートコミュニティ実証事業」だ。同プロジェクトは数年のシステム開発期間を経て2016年からクローズドのフィールド実験をスタート、一定の成果が出たことから昨年より商業ベースで展開している。
現在、商業ベースでスタートしているのは、太陽光発電とエコキュートによる給湯の販売である。本来なら太陽光発電および風力の再生可能エネルギーで全島の電力を賄えればよいのだが、夜間などの発電できない時間帯に電力を供給するためには大規模な蓄電池が必要となる。
しかし、蓄電池はまだまだ高価なため全島をカバーできるだけの台数を用意するのは現実的ではない。そこで考え出されたのがエコキュートを組み合わせたビジネスモデルである。
「太陽光パネルの価格は下落しており、すでに発電コストは電気料金を下回っているため、1kWhあたり20円で提供できる」と、ネクステムズの比嘉直人代表取締役社長は説明する。同社は、沖縄県から委託を受けた宮古島市から再委託を受け、プロジェクトの肝となるシステムの開発、運用、実証実験を行っているベンチャー企業だ。
現在、沖縄電力の従量電灯料金は1kWhあたり22.5円~29.9円。それよりも安い料金で電力を供給できれば、島民にとっても、赤字を抱える沖縄電力にとってもメリットになる。しかし、太陽光で発電できる日中は仕事や学校で家にいないため、発電した電力が余ってしまう。そこで、発電した電気を使ってエコキュートで沸かしたお湯を販売するというビジネスモデルを作り上げた。
お湯の供給価格は100L(50℃)あたり45円と、プロパンガス給湯よりも1割ほど安い価格設定になっており、利用者にとってはメリットが大きい。なお、夜間など太陽光が発電しない時間帯は沖縄電力から電気の供給を受ける。
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