施工品質が「人」によって左右される大問題 建設現場の「技術の見える化」が必要な理由

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「建設技能労働者がCCUSに登録するメリットを実感するのは、建退共(建設業退職金共済)システムとのデータ連携が実現したときだろう。当面はCCUS登録者に労災保険の保険料などでインセンティブを与えるなどの措置が必要ではないか」

2013年から建設業のマッチングサイト「ツクリンク」を運営するベンチャー企業、ハンズシェアの内山達雄社長も、CCUSの普及には技能労働者がメリットを実感できる仕掛けが必要とみる。

建設業界では仕事量の変動によって職人が余ったり、足りなくなったりすることが頻繁に起きる。ツクリンクは、一人親方の個人事業者を含む建設会社同士で事業者募集を行うマッチングサイトだ。建設版フェイスブックのようなサイトで、登録料は無料。会員数は約3万社で、積水ハウス、一条工務店、タマホームなど大手企業も参加し、月60万ユーザーが利用している。

ツクリンクの利用者が一気に伸び出したのは2年ほど前からで、その理由を「職人にもスマホが本格普及したから」と内山氏は見ている。それだけにCCUSのサイトも「まずはスマホで簡単に登録できるなど使い勝手をよくするべき」と提案する。

消費者や発注者も関心を持つ必要がある

具体的なメリットとして期待する建退共とのデータ連携は、今国会で審議中のデジタル手続法案が成立した後でシステム開発に着手。本格導入は2年先の2021年頃になる見通しだ。退職金共済手帳に専用の証紙を張って掛金を納付するという面倒な手続きが電子化されれば、利便性が大幅に向上するだろう。

今後、CCUSの普及で「技能の見える化」が進めば、ツクリンクのようなマッチングサイトでは「シルバーのIDカードを保有する建築大工を募集」や、企業紹介ページには「施工能力☆4つの工務店です」といった使い方が想定される。「将来的にツクリンクは、一般消費者にも見てもらえるサイトを目指したい」と、内山さんは発注者と事業者とのマッチングも視野に入れている。

CCUSの普及は、人材不足に苦しむ建設業界だけの課題ではない。住宅の新築やリフォーム工事を発注する消費者を含めて発注者側も、関心を持って「技能の見える化」を後押ししていく必要があるだろう。

千葉 利宏 ジャーナリスト

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ちば・としひろ / Toshihiro Chiba

1958年北海道札幌市生まれ。新聞社を経て2001年からフリー。日本不動産ジャーナリスト会議代表幹事。著書に『実家のたたみ方』(翔泳社)など。

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