ついつい買ってしまうガンダムグッズ
元ライブドア取締役の榎本大輔氏(アラフォー世代)は、私財22億円をつぎ込んで宇宙旅行をたくらんだが(病気の発覚により断念することになる)、宇宙に行ってやりたいことの筆頭に、「ガンプラを作る」を挙げていた。詰まるところ、この世代は宇宙に行っても、やりたいことといえばこの程度のことなのだ。
さらに、ガンダムグッズは数多くあるが中でも「シャア専用」の冠がつけられた商品は、マウス、携帯電話、ボールペン、Tシャツ、USBメモリー、最近だと自動車なんかが商品化されてきた。これらになるともう買うほうが問題というか、本当に頭が悪い。そういう僕とて、買った経験があるので強くは言えないのだが……。
だが「ガンダム」が初めからこの世代の(主に男の子の)共通体験であったというのは、半ばウソである。それが面白いところである。テレビアニメの「機動戦士ガンダム」が放映されたのは、1979年のこと。現在のアラフォー世代が、まだ小学校に上がるか上がらないかの頃だ。はっきり記憶しているが、僕らはガンダム世代ではなかった。4つ5つ上の世代のものと言ったほうが正確だろう。実際、周りに本放送を見ていたヤツなんてほとんどいない。それがいつの間にか、これを知らないと会話についていけないかのような教養に引き上げられた。
営業に出かける際に、「行きまーす」といったりするくらいは序の口だ。そのうち上司からの指摘を「若さゆえの過ち」だからといって認めなかったりするようになる。そして、「当たらなければ、どうということではない」と言いながら、賞味期限が切れたおにぎりを食べてみたりするようにすらなる。
具体例はともかく、現実の人間関係がガンダム内の人間関係に例えられたり、ガンダムの中のせりふを日常に使ったりといったことは、すでに定着している。
実際、ガンダムをネタにしたビジネス本は無数に発売されている。『一年戦争に学ぶ“勝ち残る組織”のつくり方 』だとか『シャアに学ぶ“逆境”に克つ仕事術』などといったものがそれだ。『僕たちはガンダムのジムである』なんて本もあると聞いた。ガンダムならともかくジムって……。
みんながガンダム、ガンダムと「共通体験」のように共有され、ガンダム消費の市場規模が拡大していった背景には、2つの重要なポイントがあった気がする。ひとつは、2000年代初頭に宝島社が刊行し、大ヒットした『僕たちの好きなガンダム』である。
この本は主にコンビニ流通を通してヒットした。30代にかかろうとするかつてのガンダム世代のノスタルジーをくすぐったこの商品は、半ば忘れていたガンダム知識の再強化の機会を生み、われわれ世代は、ビジネスマナー書を読むようにガンダムの知識を補充した。そして、まるで昔から知っていたかのような顔をすることが、できるようになったのだ。
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