「ビリ店長招いてCEOと会食」に問題はないのか ビジョンメガネが珍しい会食制度を導入した

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2点目は、店舗を5つのカテゴリーに分けているということです。

ワースト15店舗は、単純に全国の店舗の中から下位15店舗が選ばれるということではないそうです。過去の売り上げ実績などから全国の店舗を5つのカテゴリーに区分し、各カテゴリーの下位3店舗がビリ店長の食事会に呼ばれるということです(5カテゴリー×3店舗=15店舗)。

これらの調整があることで、仮にワースト15店舗に選ばれたとしても、選ばれた店舗の店長やスタッフは、単純に売上高だけでワースト15店舗とされた場合に比べれば、納得感を得やすいでしょう。

ただし、念のため付言するならば、納得感を得られると言うためには、「話し合い」の実態が、終始、会社側主導のペースで進み各店舗は迎合せざるをえないということではなく、店舗側と会社側が対等な立場で話し合って、事業計画が作成されていることが大前提です。

数字の粉飾などの懸念は?

4つ目は、ビリ店長とCEOの食事会がモラルハザードの温床にならないかという懸念です。

ビリ店長の食事会が業務上正当なものであるとはいえ、やはり、ビリ店長15人に選ばれることを避けたいと考えるのが一般的な人間心理でしょう。それゆえに、無理に数字を作ろうと強引な営業活動に走ったり、数字の粉飾の温床になったりしないかということが懸念されます。

ビジョンメガネに確認したところ、確かに今回の「食事会」の話だけを切り取れば、売り上げ至上主義に見えてしまうものの、お客様満足度、複数販売率のような評価軸や新任店長賞やV時回復賞のような表彰制度も社内に設けているということです。

こういった、さまざまな評価軸や表彰制度がある中の1つとして、ビリ店長とCEOの食事会制度が存在するというのであれば、人事評価制度全体のバランスとしては、問題があるということにはならないでしょう。

ここまで制度を分析してみて、「ビリ店長とCEOの食事会」という名称自体はインパクトがあるものの、会社側の言う配慮などが適切に行われていれば、明らかな法的問題は存在しませんでした。

CEOと現場が接点を持つ機会、店舗間の交流、食材の調達を考えるにあたってのサービス精神の醸成など、会社が意図しているメリットも期待できそうです。

しかし、そのうえで注意が必要なのは、実際に運用が意図したとおりにいくかということや、運用していく中で明らかになる課題もあるはずだということです。

会社側の独善に走ることなく、実際に参加した店長の意見にもしっかりと耳を傾け、労使が納得いく制度にしていくことができれば、さらによい制度に熟成できるのではないでしょうか。

榊 裕葵 社会保険労務士、CFP

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さかき ゆうき / Yuki Sakaki

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。会社員時代の経験も生かしながら、経営分析に強い社労士として顧問先の支援や執筆活動に従事している。

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