「ビリ店長招いてCEOと会食」に問題はないのか

ビジョンメガネが珍しい会食制度を導入した

すなわち、ワースト15の数字というのは、あくまでも「店舗」にひも付く数字であり、「店長」個人を評価したり、攻撃したりするための数字ではないということです。店舗の長である店長が、店舗を代表してワースト店長の会に参加をして、学びや気づきを店舗に持ち帰って改善に役立ててほしい、というのが、会社が意図しているビリ店長とCEOの食事会の真意でした。

そして、ビリ店長とCEOの食事会当日の場においても、各店長個人の責任問題を議題とすることは禁止し、建設的な意見交換を行う会にすべきことを徹底しているということです。

会社側の回答のとおりに配慮などがきちんと行われるのであれば、食事会の目的も業務上正当なものといえるので、パワハラの定義から考察すると「ビリ店長とCEOの食事会」がパワハラに該当する可能性は高くないと考えてよいでしょう。

とはいえ、実際の会議の場で議論が白熱して、つい乱暴な口調になったり、個人攻撃をしたりしてしまうという可能性は排除できません。「実行段階でのパワハラ」が生じないよう、会社としては、「ビリ店長とCEOの食事会」の当日にも最大限の注意を払うことが必要です。

感じ方は人それぞれ

加えて、いくら会社側が責任問題を議題とすることは禁止したり個人名を掲載しないなど配慮をしていたとしても、感じ方は人それぞれです。ワースト店長として本社会議室に呼ばれることだけでも苦痛に感じる人もいるかもしれません。

その結果、ストレスが蓄積して、うつ病などの精神疾患の原因となってしまうリスクも生じますから、会社は「安全配慮義務」の観点からも本制度の運用には慎重に取り組む必要があります。

また、社内の組織表などで誰がワースト15の店舗の店長なのかということは間接的に特定できるでしょうから、法的にはパワハラにはならなかったとしても、店長の中には不快感を持ったり、モチベーションを下げたりする人も出てくるかもしれませんので、この点も注意・配慮が必要でしょう。

3つ目は、店舗間の前提条件の違いが、ビリ店長の選出時に社内に不公平感を生まないかということです。

店舗の立地、規模、営業年数など、店舗ごとにさまざまな前提条件の違いがあるはずです。これらは店長やスタッフの努力では埋められない差であるのに、売り上げだけを見てワースト15店舗と言われたら、店長やスタッフが不公平感を持つことは火を見るよりも明らかです。

この点に関しても、ビジョンメガネから回答を得ることができました。同社では、上記のような不公平を解消するため、以下2つの選定基準を使っているということです。

1点目は、売り上げの絶対額ではなく、各店舗が事業計画で設定した予算に対する「達成率」でワースト15店舗を決めるということです。

事業計画作成時点の予算は、会社が一方的に押し付けた数字ではなく、年度末の予算策定時期に、店長・担当マネジャー・部長が過去の売り上げ実績、次年度以降の競合状況や環境変化を勘案して話し合いを行い、会社と各店舗の店長が合意をしたうえで次年度の予算を決めるそうです。

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