「ビリ店長招いてCEOと会食」に問題はないのか ビジョンメガネが珍しい会食制度を導入した

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ビリ店長に選ばれてしまった悔しさをバネにして奮起することや、ビリ店長同士で意見交換をしたり、CEOから直接アドバイスを受けたりすることで、業績向上のきっかけにしてほしい、という会社の考えはもちろん理解できます。

しかし、制度が法的に問題のない形で運用されているのかということや、制度の影響で社内に何らかのリスクやひずみが生じないか、といった事項が懸念されます。

4つのポイントから考察

そこで、ビジョンメガネに問い合わせを行い、 「会食制度」の主旨などについて回答を得たうえで、本稿では4つのチェックポイントから考察を加えました。

1つ目は、ビリ店長とCEOの食事会が「サービス残業」に該当しないかということです。

ビリ店長の食事会も、業務命令ではなく任意参加の会として開催され、参加・不参加は人事考課の対象にされないということです。しかし、実質的に考えて、参加しないことに対するプレッシャーは小さくないであろうということや、会の内容も親睦会というよりも研修会の要素が強いので、法的には労働時間と考えなければならない可能性が残ります。

この点、ビジョンメガネに確認したところ、同社もこの可能性を認識しており、ビリ店長の食事会は、食料を準備する時間も含めて労働時間として取り扱い、時間外手当も支払うことにしているということです。1500円の手土産の調達費も会社が負担するということです。少なくとも金銭的な側面においては、労働基準法などの法令に違反する取り組みではないことを確認することができました。

2つ目は、ビリ店長とCEOの食事会がパワハラに該当しないかということです。

本制度に限らず、会社としてはよかれと思って導入した制度であったとしても、従業員がそれをパワハラと感じ取る場合があります。

パワハラかどうかを考察するにあたっては、厚生労働省がパワハラ防止のために開設したWEBサイト「あかるい職場応援団」が参考になります。同サイト内でパワハラの6類型というコンテンツが用意されており、客観的に見てパワハラにあたる行為の具体例が列挙されています。

この6類型の1つに「精神的な攻撃」が挙げられており、「侮辱、暴言など精神的な攻撃を加えるパワハラ」と定義されています。もし、「ワースト15店舗の店長の名前を貼り出し、恥をかかせることで奮起を促す」といったような話であれば、明らかにパワハラに該当するでしょう。

同社に尋ねたところ、もともと店舗ごとの売り上げ予算達成率が社内の情報共有のためイントラネットで公開されており、ビリ店長とCEOの食事会も、その延長線上での取り組みであるということです。

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