福岡で見た「外国人技能実習生」の暗くない実情 ベトナム人が急増、就労環境整備は未だ課題

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グローバCAの立ち上げにあたり、徳丸さんはベトナムの送り出し機関を30ほど、福岡の監理団体も多数見て回った。「技能実習生の制度は、いわゆる人材ビジネスになっています。私がベトナムの送り出し機関に行くと過剰な接待を受けたり、健全ではない気配も多々あり……。私たちは明るくクリーンにしたくて、信頼できる3つの送り出し機関と契約し、自分たちで監理団体を立ち上げることにしました」

グローバCAでは2018年10月に受け入れを始め、2019年3月末までに福岡県内の会員企業5社でベトナム人男女17人が働き始めた。仕事は建築関係や工場、ビルメンテナンスなど。マッチングの手順はこうだ。実習生を受け入れたい企業は、グローバCAを通して送り出し機関に求人票を出し、1~2カ月後に現地で面接。採用者は送り出し機関で半年、日本語やビジネスの研修を受けて来日する。

実習生とのトラブルもつきものだが…

「ご紹介した会社の方々には、実習生がしっかり頑張ってくれると喜ばれています」と徳丸さん。ただし、彼らはまだ日本語を勉強中。「相手の日本語がわからないとき、笑顔でごまかすことがある。送り出し機関で、日本人は笑顔で働くと教えられるようなんです。それがトラブルのもと。わからないときはわからないと言うように指導しています。

一方、企業の方にも、実習生が言葉を理解できなくてもイラっとせず、ゆっくり話してあげてほしい、そうしないと流したりごまかしたりするようになるので、とお願いしています」

技能実習生が、近隣住民から不審がられたこともある。「暗いニュースの影響もあるのでしょうか……。彼らが夜、仕事から自転車で帰ってきてベトナム語で話していたら、警戒されても仕方ないかもしれません」。

そこは、住民に笑顔で挨拶することで解決できるはず、と徳丸さんは力を込める。「彼らは『日本は礼節の国。しっかり挨拶するように』と研修を受けて来るけれど、いざ職場で元気に挨拶してもシラーっとした反応で、そのうち挨拶がおろそかになることも。企業の方には、挨拶を返してあげてくださいと話しています。職場で挨拶しなければ、地域でもできませんから」。

グローバCAには県内の企業から「うちもベトナム人を受け入れたい」という声が多く寄せられ、6月までにさらに20人が入国予定だ。うち2人は、日本でも注目されている介護分野。「日本としては積極的に介護人材を受け入れたいようですが、日本語レベルや研修などの条件が非常に厳しく、そのわりに給与はさほど高くないため、求人を出してもなかなか応募がありません。ベトナム人は家族を大切にするから介護も好きなはず、というのは日本人の勘違い」と指摘する。

そして「今はベトナム人のほうが選べる立場。彼らは横のつながりが強く、フェイスブックなどのSNSを通じて給与や待遇の情報を共有し、ベトナム本国にまで伝わる。いいことも悪いことも筒抜けなのです。いい人に来てほしければ適切な給与を設定し、大切な人材として接することが重要です」と語る。

グローバCAでは、日本語学校で学びながら、会員企業でアルバイトするベトナム人もサポートしている。飲食店でバイトリーダーになるベトナム人も出てきたという。「日本語はまだ十分でなくても、真面目に働いてくれる彼女たちはバイト先で頼りになる存在。日本人はちょっと注意するとやめてしまったりして続かないらしく、日本の将来が心配になりますね」と徳丸さんは明かす。

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