東北でさえ「低賃金」の外国人に頼り切る現実 企業や社会の維持に手前勝手はもう通じない

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気仙沼市の水産加工業「かわむら」で働く インドネシア人の技能実習生(記者撮影)

「あんな不毛な論争をやっていたんじゃ、日本には誰も来てくれなくなる。質問する野党議員も、取り繕って答弁するばかりの政府も、地方の窮状がまるでわかっていない」

宮城県気仙沼市でワカメやコンブの加工業を営む「かわむら」の川村賢壽会長は、昨年秋の国会で審議された入管法(出入国管理法)改正案の審議を見ながら、いら立ちが収まらなかった。「外国人を最低賃金以下で使い倒すとかパスポートを没収するとか、そんなことをやっている会社がなぜ生き残れている。国は何をやってきたんだ。法律違反を犯す会社があれば2度と外国人労働者を雇えなくなるくらいのペナルティーを与えるくらいのつもりで制度運用すべきだ」

『週刊東洋経済』は1月7日発売号(1月12日号)で、「”移民”解禁」を特集。改正入管法の成立を受け、新たな在留資格の創設の狙いや、日本側の受け入れ体制、外国人当事者の悩みなど外国人労働者問題の最前線を追った。

『週刊東洋経済』1月7日発売号(1月12日号)の特集は「“移民”解禁」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

外国人労働者の人権をないがしろにする会社の蔓延に、川村会長が危機感を募らせるのは、技能実習生の存在なくして現場が回らないことを、ここ数年で痛いほど感じてきたからだ。2011年の東日本大震災で壊滅的な被害を受けた気仙沼市は激しい人口減少に苦しむ。震災前、約7万4000人が暮らしていた同市では震災・津波で約1500人が亡くなり(行方不明者含む)約6万4000人まで落ちこんでいる(2018年11月末現在)。現在も人口流出に歯止めがかからない。

【2019年1月8日13時40分追記】初出時の震災・津波の犠牲者数に誤りがありましたので、上記のように修正しました。

まちの活力を支えてきた若い世代ほど仙台や東京へと働き場所を求めて移住していくため、まちの高齢化が進む。同市の60歳以上の人口割合をみると男性は1万2635人(市人口の約41%)、女性は1万5820人(同約48%)、全体では2万8455人(同約44%)にのぼる。働き手がみるみると減っているのだ。

「日本でお金を稼ぎ、大学に行きたい」

不足する労働力を補うように増えてきたのが技能実習生たちだ。かわむらではインドネシアやミャンマーから来日した54人の実習生たちが働いている。

「こちらがイコさんです。年齢は、えーっと、35歳だったな」

「いえ、17歳です」

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