家具業界の革命児・ニトリ、本格化する消費不況こそチャンスだ--似鳥昭雄社長《特集・流通大乱》
不振を極める家具業界で、低価格を武器に依然好調のニトリ。業界の革命児が読む今年の消費動向は。似鳥昭雄社長に聞いた。
今年は、去年より一層冷え込むと見ている。すでに、アメリカでは高級家具や総合スーパー(GMS)からディスカウントストアに顧客が流れている。最近、視察でウォルマートに立ち寄ったのだが、少し前まで3分の1程度だった白人客が、半数に増えたように感じた。デパートやGMSを利用していた彼らが、低所得者向けのウォルマートに来ている。消費が低価格に押し下げられたことがよくわかる。
1929年の世界恐慌とまでは行かないが、今回の金融不況が戦後最大の不況となることは間違いない。今後、消費者はより低価格のお店を選ぶようになる。好調だったウォルマートやディスカウントストアでも、買い控えが出てくるだろう。生活必需品さえもマイナスになるということだ。住まいの商品に関しても、売り上げが本格的に落ち込むのは今年だと覚悟している。
不況を機に、日本は「競争」の時代に突入するだろう。外資企業の進出などで、地域間の「競合」から世界規模の「競争」になるという意味だ。アメリカでは家電量販大手のサーキットシティが破綻するなど、淘汰が進んでいる。競争に巻き込まれれば、どの業界も安泰とはいえない。
ただ、大部分の産業が悪化するなら、ニトリにとってはチャンス。どんな時代でも低価格の追求は永遠のテーマだ。低価格に品質と機能、サービスを付け加えるという考え方は変わらない。店をきれいに改装したところで、お客さんは店を見にくるわけではない。ましてや店員に会いにくるわけでもない。買い物をする理由の8割以上は商品の魅力だ。これはどの業界にも共通する。
家電量販店にデジカメを買いに出掛けたとき、商品保証におカネが必要だと言われて驚いた。保証は当たり前じゃないかと。ニトリは家具に3年間の保証を付けている。交換費用は年数億円かかるが、こうした費用を抑えようとして、社員の技術は向上するものだ。それはお客さんにとっての安心料で、ニトリにとっては成長するための授業料になる。
これまでずっと、「日本の住環境を欧米並みに豊かにしたい」という思いでやってきた。衣料や食品は追いついてきたが、住環境は20~30年遅れている。現在、国内の店舗数は185店。この倍の規模には拡大できるだろう。地方にも出店を進めて、その目的を達成したい。
(週刊東洋経済)
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