32歳引きこもりの息子に母が惜しみなく注ぐ愛 不登校、強迫性障害、「親ゼミ」を経て…

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当時、マンションの3階に住んでいたのですが、ある日息子が「お母さん、ここから飛び降りたら死んじゃうよね」と言ってきたことがあったんです。

イスのうえにしゃがんで揺れる息子の姿は、母親の知らないものだった(イラスト:不登校新聞より転載)

その記憶が学校にいる息子の姿とつながりました。どんな気持ちで言っていたんだろうと想像して、「もう学校に行くの、やめよう」と息子に告げました。私自身、覚悟が決まったんです。

――それからは家ですごしていたんですね。

ゲームをしたり本を読んだり、ふつうの2年生が遊ぶときと同じようなことをしてすごしていましたね。最初はドリルを解かせたりもしましたが、半年くらいでやらせるのが面倒になっちゃって、自然と息子もやらなくなりました。

学校へ行かせようとしていたときの息子はげっそりしていましたが、やめてからはだんだん食欲も出て、笑顔も戻ってきたので、「これでいいかな」という感じでしたね。

その後、夫の都合で何度か引っ越しと転校をくり返しましたが、中学になっても息子が学校へ行くことはほとんどありませんでした

つらかったのは強迫性障害

――母親としてつらかったことはなんですか?

つらかったのは、息子が14歳のころに強迫性障害になったことですね。突然「人間のたてる音がうるさい」と言い出して、布団をかぶったまま出てこなくなったんです。

ひどいときは、お腹の調子が悪いと言ってトイレに閉じこもって一日中出てこないときもありました。

延長コードを買ってきてトイレにパソコンを持ち込んで、そこで生活している状態だったんです。私は自分がトイレに行きたいときは近くにあるスーパーを借りていました。

お風呂から出られなくなった時期もありました。そのころは水道屋さんから「今月10万円くらい水道代かかってますけど、どこか漏れていませんか」と聞かれたりもしました。

また、息子は夫を受けつけなくなりました。夫が仕事から帰ってくると、どんなに深夜でも外に出てしまい、夫が寝たころにこっそり帰ってきました。

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