【回答】善しあしでなく選択の問題。なくしたときの影響を考えてみよう
増本:日本の新卒一括採用の仕組みは「メンバーシップ型」と言われる。企業は未経験の学生を採用し、入社後に育成する。学生にとってはポテンシャルを見込まれた採用で、新卒という看板のもと、就職する機会を得られるわけだ。
多くの場合は「総合職」という括りで採用され、さまざまな部署で仕事を経験しながら一人前になる。企業にとっては、入社時期が決まっていたほうが毎年の人員配置や育成の計画が立てやすく、そこから逆算して、採用活動もある期間にコストやパワーを集中させるほうが効率もよい。
一方で、欧米など諸外国の多くは「ジョブ型マッチング」と言われる採用手法をとっている。ジョブ型では、日本の「企業に就職する」概念と違い、ピンポイントで「この企業のこのポジションに就く」ことを原則とする。そのため、大学のレベルや専攻によって応募資格がないポストもあるし、学生時代に職業につながる経験をしていなくては相手にされないこともある。つまり、新卒も中途も同じ土俵で戦うことを意味し、実力主義の環境を好む学生には魅力的に映るかもしれない。
「大学を出ただけでは就職できません」の環境を選ぶ?
大家:制度としてどちらがよい悪いではなく、どちらを選択するかの問題だ。日本で、もし企業が「その大学を出ただけでは就職はできません。就業体験やボランティアなどでキャリアを磨くのを前提に、そのときにポストがあれば採用です」と言い出したら、どうなるか。
日本で大卒の就職率は90%ほど。ところが欧米でもアジアでも就職率40~50%の国はざらにある。日本が後者になってもよしとするのか。
就活の制度は「点」で捉えても変えられない。大学までの教育制度や、企業の雇用に対する考え方など、複雑に絡む「線」で見て議論する必要がある。産業構造は変化を続け、日本企業が勝負する土俵もグローバルに広がる。
1つの企業に勤めあげるのでなく、転職してステップアップする考え方も今では当たり前だ。多様な人材獲得のために多様な採用方法が必要なのは間違いない。一括採用も時代に合わせた変化が必要だろう。しかし、仮に一括採用という目安をなくした場合に、どのような未来が待っているのか。天秤にかけて考えなければならない。
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