中国の「信用社会」はどこまで信用できるか アリババ、テンセントも関連ビジネスに参入
中国では防犯カメラが急増し、もはや「あって当たり前」の存在になりつつある。画像認識技術の進化に伴い、小売店舗など、高速で顔認証できる仕組みになっているところも増えている。海外のマスコミでは「中国は監視社会に向かっている」との報道も多いが、現在の中国にとっては最善の選択になるかもしれないと言わざるをえない。
中国の多くの都市は、渋滞がなく安全な都市生活を実現するスマートシティーやセーフシティーの建設に取り組んでいる。カメラの設置は防犯から、犯人の認識・逮捕、市民のマナー向上にまでつながる。
筆者は昨年、広東省深圳市にある企業の業界向けソリューションショールームを訪問した。その企業が提供するセーフシティーのソリューションは、街に多くのカメラを設置し、状況をつねに把握、何か事件があった場合、すぐにいちばん近くの警察署に連絡が入るという仕組みである。
これについてどう考えているかと、一般人や企業、政府関係者に尋ねたところ、「仕方がない」と前置きをしながら、「安全のためであり、犯罪の減少やマナー向上につながっている」との回答が多かった。
伝統の“コネ社会”が足かせに
考えてみれば、信用に関しては約2500年前に孔子が、「民信無くば立たず」と信用の重要性を強調していた。それにもかかわらず、中国社会やビジネスにおいて、「コネがいちばん重要で、契約精神が欠けているため、信用社会の実現ははるかに遠い」との指摘がある。
こうした指摘の背景には中国の「人情社会(コネを大切にする社会)」というカルチャーがある。だが、信用システム整備の遅れや、個人・企業に対する確固たる信用評価の不在こそが根本的な問題だろう。
中国では個人に対する信用評価の歴史が浅い。2006年に設立された中央銀行の「征信中心(信用評価センター)」が最初だとされる。「征信中心」は、住宅ローンやクレジットカードなどの返済履歴から個人に対する信用評価を行っている。しかし、対象者は融資実績のある約3.7億人(全人口の26%)にとどまり、それ以外の多くの中国人に対しては信用評価ができていない状況だ。
そこで2014年に中国国務院は、政府や商業領域をはじめとする業界の信用情報データベースを構築し、社会全体の信用システムを建設する「社会信用体系構築計画綱要(2014~2020年)」を打ち出した。
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