「外資系トップ」が教える管理職1年目の基本 人事や総務リーダーこそ「ビジネスセンス」を

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この例え話は、実はもう1つ重要な能力の必要性を示唆しています。それは、厳しい環境下で単に生き残るだけでなく、そのうえで中華料理屋を大繁盛させてしまうような「ビジネスセンス」の有無です。

ビジネスセンスとは知識やスキルを価値に結び付ける感覚のことです。価値とは顧客が対価を払うに値すると判断する商品やサービスのことです。いくら自分で「この商品は高品質だ」とか「このサービスは独自のものだ」と言ったところで、顧客が対価を払おうと思わなければビジネス的には無価値です。

では、このビジネスセンスは、会社の中で誰が、あるいは、どのような部門で働く人が持つべきものなのでしょうか。

管理部門の顧客は「社員」

私が勤めていたアメリカ系資産運用会社で親会社の幹部が出張してきたとき、日本法人の各部門の責任者全員に対して次のような質問を投げかけました。

「あなたにとっての顧客は誰なのか?」

営業をはじめとした直接的な顧客サービスを行っている部門は、すんなりと答えることができますが、一瞬、戸惑いを見せたのは人事/総務、財務/経理、法務などの管理部門の人たちです。

「自分たちがサービスを直接提供しているのは誰か? その人たちがいなければ自分たちのサービスは成り立たないのは誰か?」と彼は続けます。

彼の求めている回答は明確です。管理部門にとっての顧客は社員なのです。彼は「社員という顧客」の存在があってこそ、管理部門の仕事があることを改めて問うたのです。

管理部門であっても、「社員という顧客」に対して十分な価値を提供しているかどうかが厳しく問われるべきであり、そこには、やはりビジネスセンスの存在が欠かせません。ビジネスセンスは、経営者や営業・企画など社内の一部の部門だけではなく、管理部門を含めたすべての部門にとって必要なものなのです。

最近は日本企業でも、部門別の収支をモニタリングする『管理会計』が当たり前になってきました。例えば、3つの事業(収益部門)がある企業では、部門ごとに売り上げ、コスト、利益、さらに利益率や成長率などのさまざまな財務指標が計算され、重要な経営情報の1つとされています。

各収益部門のコストにはもちろん管理部門のコストも含まれます。あらかじめ定められた配分ルールによって、人件費などを含む管理部門の全コストを収益部門で引き受けるのです。つまり、管理部門は収益部門が得た売り上げで、内部的に雇ってもらっているという構造です。

したがって、管理部門は管理会計上、提供しているサービスが負担してもらっているコストに十分見合っていることを、社内から認めてもらう必要があります。

もし、そこに疑問符がつくようであれば、外資系企業の場合は、外部にその仕事を丸ごと委託するアウトソーシングという選択肢が検討されることになります。

そうならないためにも、管理部門の社員にもサービスの価値をより高めていく意識――ビジネスセンス――が必要になってくるのです。

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