自称「怨念系編集者」の本がバカ売れする理由 ネガティブだからこそ作れる本がある

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自らを「ネガティブ系編集者」と称する大坂さんが、近年ヒット本を連発している理由とは(撮影:尾形文繁)

田村耕太郎著の『頭に来てもアホとは戦うな!』が異例のヒットを記録している。2014年刊行にもかかわらず、一昨年から部数を伸ばし累計部数は71万部突破。2018年オリコン年間本ランキング ビジネス書部門では1位を獲得し、ドラマ化も決定した。

その異例のヒット作を手がけたのが、朝日新聞出版の書籍編集者・大坂温子さん。出版不況が叫ばれるなかで、『朝日ぎらい』(橘玲)、『論破力』(ひろゆき)など、2018年に担当した書籍はすべて重版という結果を残している。

自他共に認める「ネガティブ系編集者」

そんな大坂さんのモットーは、

・志を低く、目標を持たない
・ムカついたことは、企画にしてお金にする
・人にとことん頼る
・働きたくないことを肯定する

働きたくないことを肯定し、寝る前には布団の中でくよくよ考え、元彼が不幸になっていないかの“不幸検索”も怠らない――。そんな自他共に認める「ネガティブ系編集者」がなぜ、ヒット本を連発できるのだろうか。

『一発屋芸人の不本意な日常』(山田ルイ53世)、『「やりがいのある仕事」という幻想』(森博嗣)、『天才はあきらめた』(山里亮太)。大坂さんの手がける書籍は、どれも人の等身大の姿や価値観を映し出していて、本が膝をついて自分と同じ目線で語りかけてくれるような感覚を覚える。

「1日1個企画を作る」ことを自分に課し、手帳に書き留めることを10年続けているという大坂さんの企画は、「腹が立つ」「ふがいない」「編集者つらい」「働きたくない」――。彼女が感じる日常の怒りや悩み、つらさが原動力になっているという。

「日々のムカついたことを企画にしてお金にしている感覚です(笑)。どうしても企画が作れない日は、そのときのもやもやした感情を書き込んでいます。最近は『モチベーション下げマンとの戦い方』というアイデアを書いて、実際に企画化しました(笑)

自分にだけ当たりが強い人がいたり、この間なんかは、なぜだかはわからないんですけど、町中で知らない人にいきなり『死ね!』って怒鳴られたことがあったり。それを著者さんに『何でですか……?』と聞く。『助けてください』って著者さんに悩み相談をして、解決策として本を出していただくという感覚です」

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