自称「怨念系編集者」の本がバカ売れする理由 ネガティブだからこそ作れる本がある

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「猫を愛でるくらいしか思いつかない……。自己矛盾してますね(笑)。何のために働いているんだろう? でも、ムカつくことがいっぱいあるから働かないと。仕事でストレスたまるのに、仕事でストレスを解消しているのは変な話ですけど(笑)。

書籍編集って波があるので、本当に精神的にも肉体的にも無理だと思うくらい働く時期もあります。でも、そんなときはそういう企画を出します。過労死についての企画みたいな。本当にわかりやすいですよね。

だから、日常の不満を表現するために働いているのかもしれないです。例えば、私がすごいお金持ちと結婚して専業主婦になったら、悔しいことあったときにどう表現していいのか今の私にはわからない。悔しいことがあったらお金に換えられる今の仕事があることが、自分にとっては幸せなことだなと思います」

「スーパー編集者」を仮想敵にして戦っていた

自身の中にあるネガティブな発想を受け入れ、肩の力を抜いて仕事をする大坂さん。しかし、かつては病的なまでに肩に力が入り、ほかの編集者と自身を比べる、いわゆる「意識の高い編集者だった」と振り返る。

「『100万部病』に取り憑かれていたんです。20代の頃は部数への渇望感が尋常ではなくて、『10万部を超える本以外作らない』みたいなことを本気で思ってました。入社試験の作文とかにも『私はいつまでに何万部出します』みたいなことを書いたり、同僚と「テッペン取ろうぜ!」みたいなことを言ってダッシュしたり。

自分の周りにいる、10万部、100万部を当たり前のように出している編集者さんは『何歳で何を作って何万部売ったか、何年目で100万部いったか』という年表を書いて、それを自分と比べるということをずっとやっていました。『スーパー編集者』を仮想敵に置いて、勝手に1人で戦っていたのが20代でしたね」

しかし、担当する書籍が「まったく売れない」時期が10年以上続く。同僚編集者の「今年初めて10万部の本が出せなかった」という言葉は、大坂さんを余計に惨めにした。

次ページ自分の才能には限界があることを受け入れて変わった
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事