自称「怨念系編集者」の本がバカ売れする理由 ネガティブだからこそ作れる本がある

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「つらすぎて、飲み会の席で3杯目ぐらいから、『私はなんで100万部出せないんだろう?』って急に悲しくなって、ビルの階段でしくしく泣いてまた席に戻る、みたいなこともありました……。本当に頭がおかしくなってた時期ですね(笑)。初めて会った編集者の方がすごい方々ばかりだったので、『自分もそのくらいの才能はあるだろう』と思っていたんです」

30代になり、大坂さんは「自分に才能がないことを認めざるをえなかった」という。「100万部病」から少しずつ抜け出し、それを受け入れることができたのは、彼女が仕事を共にしてきた書籍の著者たちの力があった。そしてそれは、現在の企画の作り方に結びついている。

かつては「助けて」の一言が言えなかった

「著者さんにも説得されながら解脱していった気がします。私がまだ仕事で苦しんでいるとき、『私には夢があるんですけど、叶う気配がないから夢の叶え方の本を書いてください』とお願いして森博嗣さんに書いていただいたのが、『夢の叶え方を知っていますか?』(2017)という本です。

その中の『夢は静止画ではなく動画で見ろ』という言葉がすごい印象的に残っています。人生はずっと続くし、すべて変化していくから、夢も変化していくもの。そういうふうに、悩みを著者さんにぶつけていきながら私も少しずつ変化できたと思います」

「売れないときつらいから」ソーシャルを使って自ら著書の宣伝をすることはしない。ツイッターはアカウントを消したし、著者との連絡用に登録したフェイスブックの友達は著者2人だけ(撮影:尾形文繁)

自分の才能には限界があることを徐々に受け入れることで、仕事の仕方にも変化が生まれた。「とにかく環境、人の力を借りる」ということだ。

「かつては『そんなこともできないの?』って言われたくなくて、『助けて』の一言が言えなかったですね。今はいろいろな知恵を持っている人がいることを知って、周りに助けを求めるようになりました。いろんな方々に負荷をかけさせてもらいながら本を出してます。そうすると、本当にいいアイデアをもらえる。

業界で数人しかいないスーパー編集者はどこの版元でも売れると思うんですが、多くの編集者は環境や運に左右されると実感してます。でも、それでいいじゃん、と。スネ夫みたいな編集術なんですけど(笑)」

次ページ今考える「いい本」の条件とは?
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事