自称「怨念系編集者」の本がバカ売れする理由 ネガティブだからこそ作れる本がある

拡大
縮小

「ただ、企画書を通すときや著者さんにお願いするときに『世の中こうだから』っていう言い方をすることはあるものの、私自身が『社会に投げかけたい』ことは一切ないんです。自分の快、不快がすべてだったりするというか。

私みたいな存在が『社会を変えたい』って、絶対うそじゃないですか。だから、自分の細々とした楽しみや悩みを、同じような考えを持った人たちに届けたい。それだけなんです」

次はモチベーションの本を作りたい

気がつけば、「売れない編集者」だった大坂さん自身も、編集者としてのステップを上り、かつての不満が満たされている状態にあるといえる。となると、モチベーションを保つのが難しいようにも思えるが……。

「よくわかりますね……。それは、本当にそうなんです。ある程度部数出ちゃったし、『もうこんなものかな』という段階ではあるので、どうやってモチベーションを保つかというのが課題です。だから、次はモチベーションの本を作りたいなと思っています(笑)」

大坂さんは、これまで得意ジャンルがないことを、長らく会社から指摘されていたという。専門分野がある編集者は、読者の顔も見えているという強みがある。

しかし、大坂さんは「飽きっぽくて、さらに飽きると仕事ができなくなる」ことでさまざまなジャンルを手がけるようになり、そこから自分の編集者としての1つの正解を見つけた。

「自分は悩みや鬱憤の専門家、『怨念系の編集者』なのかもしれないと、最近は思えるようになりました。この先、『それが得意ジャンルだ』って胸を張って言えるようになれたら。そう思っています」

和田 拓也 フリーライター、編集者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

わだたくや / Takuya Wada

 

1986年生まれの編集者/ライター。Web媒体を中心とした取材/執筆/編集や、ドキュメンタリー映像の制作を行う。ひとを前進させるカルチャーの根っこと端っこを探しています。サッカーカルチャーメディア「DEAR Magazine」主宰。ツイッターはこちら、noteはこちら

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT