自称「怨念系編集者」の本がバカ売れする理由 ネガティブだからこそ作れる本がある

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売れる本のタイトルの傾向や、はやりの働き方のようなものはあれど、「人の悩みは、本質的にはいつの時代も変わらない」と大坂さんは話す。生きるのが苦しいという悩みは、人類が存在する限りあり続ける。

「『そういうときもあるよ』って手を差し伸べて、ぐっと背伸びして『まぁしょうがない、頑張って朝起きて会社に行ってやるか』と、ちょっとでも思えるような本を作りたいと思っています。

私の担当書籍について会社からよく言われるのが、『なんか暗い』ということなんですけど、吹っ切れる前に作った本とは違うことがあって。売れ始めてからの本は、最後にちょっとだけ温かく背中を押してくれる読後感があるんです。

悩んでいる人たちに届いて、『この本は自分のために作られたんだな』って読者に思ってもらえる。売れる本の条件があるとしたら、そんな本なんじゃないかと思います」

「社会に投げかけたい」ことは一切ない

例えば、5年前に刊行された『頭に来てもアホとは戦うな!』が今も売れている背景には、炎上やクソリプの応酬、コンテクストを読み取らないたたき合いや分断、議論のできない空間など、今多くの人がうんざりしていることがある。同作刊行当時にはやっていた、『半沢直樹』の「やられたらやり返す、倍返しだ」から、「いやいや、時間も体力も有限なので頭に来てもアホとは戦うな」という考えに変化しているとも読み取れる。

しかし、当の大坂さんからは、「社会に何か投げかけたいといった思いは、私のなかには一切ないんです」。そんな答えが返ってきた。

「まさに、そういった時代性と作品のメッセージがハマってきたというのは感じますし、個人的な合理思考がしっくりくるようになってきたのかなと思います。アホが周りにいて歯を食いしばっている人、我慢している人が潜在読者としてある程度いたということも」

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