自称「怨念系編集者」の本がバカ売れする理由 ネガティブだからこそ作れる本がある

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自身の中にある違和感や悩みという原動力を著者にぶつけながら、自らが作りたい本にしていくというのが、大坂さんの書籍の作り方だ。2013年に刊行した『「やりがいのある仕事」という幻想』には、実際に読者の相談に答える章がある。

人生の価値を仕事に置きすぎるという大坂さんが、仕事に苦しさを覚え「働きたくないブームの到来」に悩んでいた当時、少しでも楽になる考えが知りたいという切実な思いがきっかけだったという。

「誰もがそんなに自由に生きられるわけじゃない」

「森先生は、1日1時間しか働かないんです。残りは広大な庭に電車を作って趣味の田園鉄道。こんなにすごい仕事人が、仕事に重きを置かずに結果を出して楽しんでいる。そんな人に、『人生の価値における仕事の比重を減らして、仕事がうまくいかなくてもハッピーでいられる方法はないですか!?』と相談をした感じです。当時のノマドブームに対して『誰もがそんなに自由に生きられるわけじゃない』という思いもあって、等身大の仕事論が作りたかったんです」

「今、泥水を吸ってはいつくばる思いで仕事をしていたり、『どうしてこんな人生なんだろう』とふがいなさを感じている人が、少しだけ楽になれるような本を作りたい」(撮影:尾形文繁)

『一発屋芸人の不本意な日常』も、まさに等身大の人間論だ。人生にはよいときも悪いときもあり、誰もがヒーローになれるわけではない。今、泥水を吸ってはいつくばる思いで仕事をしていたり、「どうしてこんな人生なんだろう?」とふがいなさを感じている人が、少しだけ楽になれるような本にしたかったという。『天才はあきらめた』では、山里亮太さんが過去にされた嫌なことを書き留める「地獄ノート」に共感し、「この怨念のパワーをガソリンにしよう」と提案をした。

日頃の等身大の疑問や怒りを包み隠さず、受け入れてくれるもの。そして、それがエネルギーに変わるもの。そんな本を作りたいと大坂さんはつねに考えている。

だが、編集者の仕事というのは、「働きたくない編集者」が抱えられる量ではないように思える。しかも、ヒットを連発しているのである。働きたくないことを肯定する一方で、人生の中で仕事がウェイトを占めているという大坂さんは、やはり働くことが嫌いどころか、好きなのではないか。

そこで、「仕事しなくてもいい」となったら何をするかと訪ねたところ、少し困った顔をしてこう答えた。

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