夫婦で「保活」に挑んだ男性が得た意外な気づき 育休をとったコピーライターの奮闘記

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1つは、申込書に「手紙」を添えてこちらの思いを伝えるという非公式のテクニック。これが功を奏する場合があると保活セミナーで聞いたのだ。僕も、認証保育所の1つに手紙を書いてみた。あれこれ考えて推敲した。が、この園はあっさり落選。手紙だけが落選理由ではなかろうが、逆に「効果のあった手紙」がどんなものなのかは興味のあるところだ。

もう1つ。認可外の申込書には多くの場合、「単願」か「併願」かを明記する欄がある。だが、正直に「併願」と申告すると瞬時に落選するという噂だった。必ず「単願」と書くべし、と。これには良心の呵責があって葛藤した。ただでさえシビアな保活で、こんな細部に悩まなければならないとは。そもそも噂がどの程度確かなのか、いまだに疑問に思ってもいる。わが家はどう折り合いをつけたのか? ここに書ききれないので、詳細は著書で読んでいただきたい。

認可はすべて落選したが…

認可は、予想どおりすべて落選だった。認可外の第1志望をどこにするかで揺らいだが、最終的には2つの「認証保育所」よりも、「保育室」のほうに心が傾いた。

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決め手となった要素は3つある。1つは、ここに子どもを(タイムリミットの3歳まで)預けた知人が2人いて、彼らが口をそろえて「認可に転園したあとも、この園のほうが保育士も給食もよかったという話になる」と語っていたこと。にもかかわらず、認可(のわが家の保育料)と比べて安いこと。最後に、家や駅から近いこと。こうなると、ここに勝る園はないと思えてくる。

そして結果を言えば、幸運にもこの「保育室」から内定をもらえたのだった。

入園式を翌週に控えた3月末、区から突然の電話があった。認可の第1希望だった園に急遽1名分の空きが出たからどうですか? という。こんなタイミングでなんたる皮肉だろう。一瞬心が揺れたが、辞退した。認可こそがベストだという先入観から、僕たちはいまや自由になっていたのだ。

振り返ると保活は、夫婦の目線と情報量と温度感をそろえる機会であり、子と一緒にいろんな場所へ出かける機会でもあった。つまりは家族がより強固になるチャンスだ。

半年間の育休で痛感したことだが、育児それ自体には明確なゴールが存在しないし、夫婦でともに闘っているつもりでも、いったい何と闘っているのかよくわからなくなる。そんな日々のなかにあって、少なくとも保活だけはゴールや目標をクリアにできるものだ。絶対的な正解などないのだろうが、それでも「ここに預けるなら後悔しない」という気持ちを分かち合えるのは心強いではないか。

入園から1年。毎日送り迎えをしながら、この園でよかったと心から思う。同時に、「よかったと思うものを、妻と一緒に選べてよかった」とも感じるのだ。育休がそれを可能にした。長期の育休取得が難しい環境にいる男性でも、例えば「3週間だけ育休を取って妻と一緒に保活を行う」などの選択があっていいと思っている。

魚返 洋平 コピーライター

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うがえり ようへい / Yohei Ugaeri

1981年生まれ。早稲田大学第1文学部・演劇映像専修を卒業後、電通に入社。第2クリエーティブ局などを経て、2019年現在の所属はCDC.競馬からアイスクリームまで、パンrフレットからテレビCMまで、業種の硬軟や媒体の規模を問わず、言葉で伝える仕事に携わる。受賞歴は、ADFEST銀賞(フィルム部門)、ACC CM FESTIVALクラフト賞(ラジオCM部門)、新聞広告賞、TCC新人賞ほか。2012年より作詞活動も。

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