GAFAを縛る「データ保護規制はナンセンス」だ ニューヨーク大教授が語るデータ活用の極意

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アニンディヤ・ゴーシュ(Anindya Ghose)/ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスのハインツ・リールビジネス学教授。情報・運営・経営科学、マーケティング学教授も兼任。2014年に海外MBAの総合情報サイト「ポエッツ・アンド・クアンツ」によって世界の40歳以下のトップ教授40人に選出され、2017年にはThinker50によって将来有望な経営思想家30人にもランクイン(記者撮影)
「混雑している電車内では、広告への反応が2倍高い」「実用的な商品の広告は朝と午後に効く」――。今や多くの消費者が片時も離さずに持ち歩くモノ、それがスマートフォンだ。長年の研究からモバイルマーケティングで消費者を引きつける方法を考え出したのが、昨年11月に『Tap スマホで買ってしまう9つの理由』(日経BP社刊)を出版した、米ニューヨーク大学のアニンディヤ・ゴーシュ教授だ。
企業はスマホを介して、消費者のウェブ閲覧履歴や位置情報などさまざまなデータを収集する。そうした“データの山”をどう活用すればいいのか。プライバシーに絡む懸念はどう考えるべきなのか。アメリカや中国のテック企業との関係も深いゴーシュ氏に、データがビジネスに与えるインパクトを語ってもらった。

企業はデータをどう生かすべきか

――スマートフォンが普及し、ネット上の閲覧履歴や位置情報などから、購買動向に深く関係する消費者の興味・嗜好が精緻に分析できるようになりました。企業にはどのようなスキルが求められるのでしょうか。

小売りでも、銀行でも、製造業でも、メディアでも、製薬でも、何かを売っている会社であれば、消費者のデータ活用は必須になる。データサイエンスやビジネスアナリティクスといった知見やスキルが求められる。日本はもちろん、アメリカや中国、インド、韓国などの国では専門の学部やコースが続々と生まれている。

――とりわけ先進的な業界を挙げると?

小売りや金融、メディア、ホテルや航空といったサービス業は(データ活用が)だいぶ進んできた。一方で製造業やエネルギー、インフラ関連の企業は進みが遅い。基本的にBtoBのビジネスを主体とする企業がBtoCよりも5年ほど後れを取っている。

先進的な企業はすでにあらゆる意思決定をデータに基づいて行っている。経営陣の属人的な勘や経験に頼った直感的なものではなく、必ずデータに立ち返るようになっている。商品・サービスの価格決定、マーケティング、収益管理、サプライチェーン、人事など、データはあらゆる領域に生かされる。

そうした企業に共通するのは、スマホ起点の膨大なデータの可能性に気づいたCMO(最高マーケティング責任者)やCIO(最高情報責任者)など、経営陣が強いリーダーシップと先見性を持っていたこと。データを分析すると、消費者行動の変化もわかり、戦略をうまく描けるようになる。

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