GAFAを縛る「データ保護規制はナンセンス」だ ニューヨーク大教授が語るデータ活用の極意

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――多くのデータを握るのが、アメリカの「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」や中国の「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」といわれています。今後それらに代わる勢力が出てくるのか、あるいは彼らがより強くなるのでしょうか。

明確にわかれば、私は富豪になれますよ(笑)。現時点での答えはその両方。テックジャイアントの影響力が増していく一方で、小さなスタートアップがイノベーションを起こし、ジャイアントに買収されるというサイクルが回り続けるんだと思う。フェイスブックは単独で大きなイノベーションを残せていない。インスタグラムやワッツアップを買収して成長してきた。

今後イノベーションで独り勝ちするのが、中国だ。アメリカではない。アメリカで20年かかった進化が、中国ではこの5年で起こっている。そのことをアメリカの経営者の多くは知らない。私はアリババやチャイナモバイルの経営コンサルタントとして、8~9年前から中国に30回以上通い詰めている。中国政府が集めたトップ人材300人を前に、データサイエンスについて講義したりね。

中国の「物まね」はバカにできない

訪れるたびに意思決定の速さに驚かされる。これは国民性だろう。今日決めたことは、明日実行する。「中国はマネばかりしている」と言われるが、最初にアメリカの成功したアイデアを借りたとしても、それを土台にして絵に描いた餅にせず、ほかの国の10倍の速度で回していく。

世界の大半の国では、スタートアップが成功した大企業のモデルをコピーすると、「そんなまね事をして」と言われる。だが中国ではそうは思われない。むしろいいことだと。ビジネスモデルの模倣によって、新たな競争相手が生まれ、互いに切磋琢磨して進化していくべき、というメンタリティがある。

――ニューヨーク大学の同僚である、スコット・ギャロウェイ教授は、『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(小社刊)という書籍を出版し、GAFAに対する痛烈な批判を繰り広げています。一方でゴーシュ教授は、テックジャイアントに対して楽観的です。

スコットとは互いに尊重しつつ、正反対な意見を持っている。彼はテックジャイアントに対してネガティブ。私はポジティブだ。彼はテックの大企業と仕事をしたことがない。私はすべてのジャイアントと仕事をした経験がある。彼の主張は理論的知識に基づいている一方で、私は実践的な知識に依拠している。

リサーチやコンサルティングだけでなく、法務の専門家として裁判や規制当局のヒアリングにかかわった。その過程で各社の内部データも垣間見た。だからこそ何が起こっているのかを理解し、テクノロジーのインパクトの大きさを知っている。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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