GAFAを縛る「データ保護規制はナンセンス」だ ニューヨーク大教授が語るデータ活用の極意

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――とはいえ、フェイスブックの個人情報流出や、欧州でのGDPR(一般データ保護規則)施行など、個人情報の扱いについて考えさせられる機会が特に昨年は多かったように思います。

彼らも世の中の動きは知っていると思う。ただそれよりも、自分の個人情報は1つの資産であり、それを活用して対価を得るという意識が強い。

私はGDPRに対して批判的だ。EU(欧州連合)の政治家たちが想定していなかったようなネガティブな副作用がある。企業は消費者にとっての執事、コンシェルジュであるべき時代が来ていると思っているが、たとえば消費者の嗜好や興味に沿ったマーケティング広告を配信するために個人情報を取得するうえで、企業は同意を取らなければならない。こうしたコンプライアンスのコストは大きな負担だ。

ゴーシュ氏はGDPRのデメリットを強調する(記者撮影)

EUの政治家たちの間ではアメリカのスタートアップやテック企業に対抗するという姿勢が強い。GDPRの大きな動機は、欧州のスタートアップを守ることだったはず。それなのに、コンプライアンスのコストが高まり、欧州の企業さえそれに苦しめられている。コストの上昇はサービスの値上げという形で消費者に跳ね返ってくる。「データ保護は消費者の権利」と標榜しているが、はたして本当に消費者を考えて作った規制なのかというと疑問だ。

EUは中国やシンガポールに学ぶべき

――具体的にどのようなコンプライアンスのコストがかかるのでしょうか。

たとえばネット通販(EC)サイトで高級時計の広告を表示するとする。あなたにはロレックスの広告が表示されて、ほかの人にはブライトリングの広告が出てくる。GDPRの規定だと、なぜ私にはロレックスの広告が出るのかを消費者が尋ねる権利がある。

これに対応しようとすると、広告のターゲティングを担うAIのアルゴリズムを事細かに説明しなければならない。だが、現時点でAIのロジックをすべて説明するのは不可能。背後にある機械学習の技術はどんどん進化する。

――では規制はどうあるべきなのでしょうか。

中国やシンガポールの規制に対する姿勢に学べることは多い。まだまだ議論の最中ではあるが、基本的に企業を罰しようという精神はない。どうすれば企業が繁栄しつつ、消費者もメリットを享受できるかという観点に立っている。

著名な中国のベンチャーキャピタリストのカイフ・リーは、「中国はAIの進化の恩恵を受け続ける一方で、EUは自ら足を引っ張る形で衰退するだろう」と予測している。EUの政治家が正しい知識を身に着けられる態勢になっていないことが問題だ。

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