福岡で異色ママの「交流バー」が盛り上がるワケ 先生・副市長・会社員・主婦の「バー○○」人気

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スタートから約2年半、うれしい出来事がたくさんあった。バー洋子で、農家の1人が「自分で育てた米でお酒を作りたい」と話すと、参加者が「酒蔵を紹介しますよ」と縁がつながり、昨年の夏に日本酒が完成した。「若手農家に活躍の場を」という谷口さんの希望がかなった瞬間だった。また、地元の飲食店が農家に相談して、少しだけ農作物を分けてもらえるようになったケースもある。

大々的な告知はせず、外に出る情報は口コミとSNS上の参加者の感想だけ。公共機関で会場に行くためには、最も近いバス停から歩いて約30分かかる。それでも毎回いろいろな人が集まり、注目されるようになった。

古民家の持ち主や都心のイベントで「出張バー洋子」を頼まれたり、佐賀県の行政機関から「地域活性化のためにバーを作りたい」と講演依頼があったり。そのうち「私もバーのママになりたい」という人が現れて、大牟田市、福津市、福岡市、春日市をはじめ、佐賀県小城市や長崎県壱岐市でも次々とバーが立ち上がった。昨年9月には、当時できていたバーのママ7人でバーサミットも開催した。

博多の台所で始まった「バー裕子」

バー洋子に感化されて、福岡市の中心部で始まったバーがある。「バー裕子」のママは、会社員の倉富裕子さん。職場付近の地域おこしボランティアをする中で、“博多の台所”と呼ばれる「柳橋連合市場」が気にかかっていた。

「母が近くに勤めていたこともあり、子どもの頃は業者さんや地元客でにぎわう市場に遊びに行っていました。でも、今は海外の観光客が目立ち、地元のお客さんが減ってしまったのが寂しくて……。地元の人をはじめ、いろんな人がつながれる場を作りたいと思っていたところ、バー洋子に参加して、これだと思ったんです」

「バー裕子」の会場は、100年の歴史がある柳橋連合市場。100mのアーケードに鮮魚店など約50店が並ぶ(筆者撮影)

2018年6月に柳橋連合市場の1店舗でバー裕子を始め、やがて市場共同組合の青年部と協力して、組合の事務所で開催するようになった。Facebookの公開イベントにしたところ、初回から50名を超える盛況ぶりだった。

利便性の良さから、市場関係者はもちろん仕事帰りの人や近所の人まで大勢でにぎわっている。

こちらも飲み物と食べ物は持参で、参加費500円。青年部のメンバーとして頑張る各店の3~4代目が、月替わりで店の名物をふるまってくれる。

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