「いだてん」受動喫煙への抗議は何が問題なのか 「共感を得るか信用を失うか」の決定的な違い

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どこに「正義」があったのでしょうか(写真:manoimage/PIXTA)

愛煙家と嫌煙家。水と油に思える両者にとっても、考えさせられるニュースが報じられました。

大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」(NHK)の受動喫煙シーンに公益社団法人「受動喫煙撲滅機構」が申し入れを行ったことが物議を醸しています。

申し入れ書の主要箇所を抜粋すると、「わざわざ受動喫煙のシーンを、公共の放送、未成年者も視聴する番組において、放映するのはなぜでしょうか」と疑問提起。さらに、「こうしたことは、受動喫煙を世間に容認させることにもなります。未成年者や禁煙治療中の人たちへ悪影響を与え、何よりも出演者・スタッフの受動喫煙被害が紛れもなく行なわれているのです」(原文ママ)と危惧し、下記2点の要望を提示しました。

一、『いだてん』において、受動喫煙のシーンは、今後絶対に出さないでください。
二、『いだてん』で、受動喫煙場面が放映されたことについて、番組テロップなどで謝罪をしてください。

この手の申し入れを受けたとき、判官びいきという日本人気質もあってテレビ局サイドに批判の声が集まりがちですが、今回はそうとは言えません。“申し入れ”と言いながらも、「今後絶対に出さない」「謝罪を」という強硬な姿勢に、「過剰反応して謝罪を要求するな」「難癖以外の何物でもない」「こんなクレームを入れる暇があるなら地道な活動をしたらどうか」「自分たちの存在意義をアピールしたいだけ」と大半のコメントが批判的なものだったのです。

なぜ同法人はここまでの批判を受けてしまったのでしょうか。さらに、「よく言った」と共感されるか、「やりすぎ」と信用を失うか、両者を分けるのはどんなことなのでしょうか。私自身は「受動喫煙を避けたい」という気持ちがあり、同法人の活動は応援したいところもありますが、ここでは多くのビジネスパーソンにとって学びになるべく、“申し入れ”の問題点をつづっていきます。

見くびられた人々からの批判殺到

申し入れ書の冒頭には、「貴局の大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』は、当機構職員や会員の多くが楽しみに視聴しております」という敬意を思わせる一文がありました。さらに、「しかし、同作品には、受動喫煙シーンがしばしば見受けられ、みな観るたびに閉口し、悲しんでいます」と怒りではなく、楽しんで見ているがゆえの悲しみを表現しています。ここまでの文章に、批判を受ける要素はありません。

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