円借款検討の石炭火力、反対住民が次々投獄 インドネシアで人権問題、外務省の対応は?

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投獄された3人の反対住民(2018年12月)(写真:インドネシア現地の市民団体より提供)

外務省と国際協力機構(JICA)が政府開発援助(円借款)の供与を検討しているインドネシアの石炭火力発電所の建設計画に関して、反対する住民が相次いで逮捕・投獄され、実刑判決を受けている。

舞台となっているのが、インドネシア・ジャワ島にあるインドラマユ石炭火力発電所。インドネシア国有電力会社(PLN)が主体となり、100万キロワットの石炭火力発電設備2基の設置という、大型の拡張工事が計画されている。そのうちの1基について、外務省、JICAが円借款を検討している。

国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは2018年10月3日、「発電所反対で投獄なのか」と題した声明を発表。拡張計画に反対して投獄された3人の農民のうち2人の農民について、市民として当然の権利を行使しただけで拘留されている「良心の囚人」として、即時かつ無条件の釈放を求める国際的な救援活動を呼びかけた。

今年2月21日、2人は刑期を終えて釈放されたが、反対住民1人が現在も刑務所に収監されたままだ。

逮捕の狙いは反対運動の弾圧?

投獄された3人の罪名は、国旗を逆さまに掲げたとの理由による「国旗侮辱罪」。2017年12月17日の深夜1時頃、地元の警察が自宅に踏み込んできて3人を逮捕した。同日23時に3人は保釈されたが、2018年9月に3人は再逮捕・未決勾留され、同12月27日に2人に5カ月、1人に6カ月の実刑判決が出された。

支援者の1人で現地の事情に詳しい国際環境NGO・FoE Japanの波多江秀枝氏は、「本人たちは罪を否定しており、国旗が正しく掲揚されていたのを見た住民もいる。国旗を逆さまに掲げたというのは事実に反した言いがかりだ。本当の狙いは発電所建設への反対運動に対する弾圧に他ならない」と強く批判する。

この逮捕・投獄事件では、外務省、JICAが検討している政府開発援助(ODA)に関して、検証対象となる人権への配慮がきちんとされているかに注目が集まっている。

JICAが策定した「環境社会配慮ガイドライン」では、協力事業の実施に際して、「人権状況を把握し、意思決定に反映する」と明記。政府が閣議決定した「開発協力大綱」でも、「当該国における民主化、法の支配及び基本的人権の保障をめぐる状況に十分注意を払う」とのくだりがある。

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