アルツハイマー病「根本治療薬」が出ないなぜ 最後に治療薬が承認されたのは15年も前
知り合いにアルツハイマー病の人がいないという人はアメリカでは珍しい。アルツハイマー病は最も一般的な認知症で、アメリカに550万人、世界に約4400万人の患者がいる。
高齢化が進み、患者数は2050年までに3倍になる可能性があると専門家らは予測している。それなのになぜ現在でもアルツハイマー病の効果的な治療法がなく、予防したり症状の進行を遅らせたりする実証もないのだろうか。
20年間、1つの方策に主眼が置かれてきた
病気の原因やどんな人が発症するのかも、いまだに包括的に理解されていないのはなぜなのか?
「アルツハイマー病は複雑だから」とあなたは答えるかもしれない。確かにそれも理由の1つだ。
この20年ほど、研究者や資金提供機関、臨床試験においては、ある1つの方策に主眼が置かれてきた。アルツハイマー病と関係する老人斑を形成するアミロイドベータと呼ばれるタンパク質の蓄積を、脳内から取り除くことだ。
しかし、一部の医薬品はアミロイドベータの蓄積を減らす効果はあるものの、認知症の症状を食い止めたり、回復させたりするのに成功した医薬品は生まれていない。また、脳内アミロイドベータの蓄積によってできた老人斑があってもアルツハイマー病を発症しない人もおり、アミロイドベータだけではこの病気を説明することはできない。