アルツハイマー病「根本治療薬」が出ないなぜ 最後に治療薬が承認されたのは15年も前

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今回の結果が得られたのは第2相治験で、研究者らはアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認に必要な、より大規模な第3相治験に取り組む方針だ。

ニューヨークのマウントサイナイ・アルツハイマー病研究センターの副所長、サミュエル・ガンディー医師は、アルツハイマー病患者の独立性をより長く維持させる機能力をわずかでも向上させる医薬品はまだ開発されていないと指摘する。

治療のタイミングが遅すぎる可能性も

「日常生活の活動に影響を与えるものが必要だ」とガンディーは言う。「飛躍的なものがまだない」。

アルツハイマー病の研究で治験が失敗に終わるケースが多いことの背景には、アミロイドベータとタウタンパク質に関わる問題がある。まず、人の認知症に似た症状を動物に出現させることで、人の前に動物に対して効果的な治療薬の試験をするのが困難なことだ。

また、スキャニング技術の高度化により、アルツハイマー病患者の脳の障害は認知症の症状が表れる何十年も前に始まっていることが明らかになった。本格的な認知症の患者に対する治験が失敗するのは、必ずしもその理論に問題があるわけではなく、タイミングが遅すぎる可能性がある。

そのため、近年では多くの研究者が超初期の認知症患者もしくは、認知症やその他の症状が出ていないものの、遺伝的リスクや髄液の中のアミロイドベータの蓄積量などからアルツハイマー病になるリスクが高い人を対象に、アミロイドベータを標的にした試験を始めている。

それらの予防治験は数年後に結果が出る予定で、なかにはアミロイドベータの役割について明確に解明するものもあるかもしれない。

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