アルツハイマー病「根本治療薬」が出ないなぜ 最後に治療薬が承認されたのは15年も前
ミズーリ州セントルイスにあるワシントン大学医学部ナイト・アルツハイマー病研究センター所長のジョン・モリス医師は「アミロイドが重要な要因でないというわけではない」と言う。「一方で、われわれは2001年以降、200以上の試験を行ってきたがどれも成果があがっていない」。
アミロイドベータ以外にも、タウタンパク質を標的にした試験も行われている。タウタンパク質はアルツハイマー病患者の脳内で繊維を形成し、神経細胞の中に蓄積される。しかし、タウタンパク質を標的にした治療薬は、今のところアルツハイマー病の撃退に成功していない。
アミロイドベータの蓄積量が減少
アルツハイマー病の治療薬で承認を受けたのはこれまで5つ。しかし、どれも初期症状に対処するもので、長期にわたる効果は見られていない。最後に承認されたのは15年前だ。
「この分野は非常に追いつめられており、私たちはみな、取り組むべきものを求めている」と、ボストンにあるブリガム・アンド・ウィメンズ病院アルツハイマー病研究治療センター長のレイサ・スパーリング医師は言う。
そうしたなかで昨夏、明るい兆しが見えた。開発中のアルツハイマー病治療薬の初の大規模治験で、初期段階の認知機能低下が見られる患者に最高量を投与したところ、アミロイドベータの蓄積量が減少しただけでなく、記憶力と思考力の問題の進行を遅らせる効果があることが確認されたのだ。
一部の専門家らは慎重ながらも楽観視しているが、「BAN2401」と呼ばれるこの治療薬についてはさらに多くの治験が必要だ。