少女像をウォール街に設置したある企業の真意

「女性役員ゼロ企業」に向けられた視線

各国政府や機関投資家から資産をお預かりして長期的な視点で運用を手がけているわれわれとしては、株式発行体の企業に対して、長期的なパフォーマンスが上がるような、よりよいガバナンスを求めていく責任があります。これが、私の役割である「アセット・スチュワードシップ」の意味するところです。

資産運用会社ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのベンジャミン・コルトン氏(撮影:今井康一)

ですから、われわれが企業に1人以上の女性取締役を置くように要求するのは、企業の長期的な価値創造を求めるためなのです。これは、企業の求めることとも一致するはずです。

――2017年3月8日、国際女性デーにウォールストリートにFearless Girl(恐れを知らぬ少女)の銅像を設置しました。これは、企業に女性取締役を増やすことを求める御社のキャンペーンの一環だったそうですね。

はい。われわれはジェンダー・ダイバーシティについて長期的に取り組むべき課題であると認識しています。まずはグローバルに認識を高めることが重要だと考えました。

そのため、グローバルな金融取引の中心地であるアメリカ、ニューヨークのウォール街にFearless Girlの銅像を設置しました。銅像には、現在活躍している女性管理職への称賛と将来世代に対する激励の意味を込めています。

――Fearless Girlはウォールストリートの象徴である雄牛に対峙する形で置かれました。非常に話題を呼び、大人も子どもも多くの人が一緒に写真を撮ってSNSで世界にシェアされました。金融業界に女性リーダーを増やそう、というメッセージを含め、キャンペーンはカンヌ広告祭でダイバーシティ分野の最高賞グラスライオンを受賞しています。

Sculpture by Kristen Visbal,commissioned by State Street Global Advisors

このキャンペーンは世界中の多くの方に支持していただきました。それに加えて「女性取締役を増やそう」というわれわれのメッセージがグローバルの企業社会に届き、具体的な成果も出ています。Fearless Girlキャンペーンから1年半後、2018年9月末時点で、新たに300社以上が取締役に女性を登用し、28社がそのようにすると約束しています。2017年の株主議決権行使期間には、取締役会のジェンダー・ダイバーシティに関する取り組みがないことを理由に、512社の議案に反対票を投じました。

日本はアジアにおける最も重要な市場

つまり、認知度を上げるための広報活動と議決権行使というわれわれの本来業務を統合して活用することで、取締役会に女性を登用する企業を増やすという目標を達成してきました。

Fearless Girlのキャンペーンは2017年3月にアメリカ、英国、オーストラリアで始め、日本・欧州・カナダでは、2018年3月からこの取り組みを導入しました。日本はグローバルなポートフォリオで重要な市場ですから、アジアでは最初に日本への導入を決定したのです。2021年以降、女性取締役を増やす取り組みへの働きかけをさらに強化する予定でいます。

アメリカの大手運用会社として初めて、われわれはこのテーマで反対票を投じるという意思表明をしました。それに追随する形で他の大手運用会社も同じポリシーを採用するようになっています。

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